Case.40 ページ48
「っ!?」
バチッと頭が覚醒して起き上がると、肩から何かずり落ちた。それはブランケットで、なんだか知っている香水の匂いがする。
っていうか、いつの間に?
かけられたことに気づかないなんて、よっぽどぐっすり寝てたらしい。店内の賑わいを見るに、どう考えてもランチ時だ。
…え、今何時?
ハッと時計を見ると、あれからなんと5時間も経っている。
噓でしょ!?
「あ、お姉さん起きたー!」
「…へ、」
女の子の声だ。なぜか聞き覚えがある。
「おはよ、Aさん」
「…あれ、ボウヤ…」
なんでここに…って思ったけど、そういえばこの子、ここの2階に住んでるのよね。
すると、そばかすの男の子がわざわざ席を立って頭を下げてきた。
「あの、さっきは起こしてしまってすみませんでした」
「え?」
起こされた?そう…だったかな…?
あんまり記憶にないから、多分一瞬だったんだろう。
「気にしないで。こんなところでずっと寝てた私も悪いし」
本当は2時間くらいで起きるつもりだったのに、あのハーブティーのおかげか、こんな時間まで寝るなんて。休日の忙しい時間帯に寝てるだけの客なんて迷惑この上ない。
零に関してはどうでもいいけど、梓さんやマスターにはさすがに申し訳ないな…。
「おや、A。起きたんですね。よく眠れましたか?」
「透…」
タイミングよく現れて、目の前にコーヒーが置かれた。
「眠気覚ましに」
「…ありがと」
その時、鼻を掠めた香りに小さく声がこぼれた。
「知ってる匂いだと思ったら…このブランケットは透の?」
私が組織にいた頃に使ってたものと同じ匂いがする。
「ええ、冷房で冷えるかと思いまして。…香水、覚えていてくれたんですね」
「まぁ、なんとなく…落ち着く香りだったから」
4年も変えてないなんて、相当気に入ってるのね。
好きなものには一途なタイプなんだろう。ブランケットを返しながらそんなことを思っていると、零は一瞬だけほっとしたような表情を見せて、すぐにいつもの安室スマイルに切り替わる。
「そうだ、Aにはこちらをお返ししなければいけませんね」
エプロンのポケットからおもむろに取り出されたのは、私が求めていた黒いパスケースだった。
「それ…!!」
差し出されたそれをひったくって、中身も無事か確認する。
……うん、大丈夫。
「良かった…!!」
深く息を吐き出して、背もたれに背中を預けて脱力した。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時