Case.32 ページ40
「……うん、やっぱり変だわ」
「ん?梅昆布茶は苦手だったか?」
目の前に座った彼はきょとんと瞬いた。
違う、そうじゃない。
「私の事、好きって……いつから」
「君のセーフハウスにいた頃からだ」
「うそ…」
全然気づかなかった。だって、まさか好意を寄せられるなんて思ってなかったし、そんなことを考える余裕もなかったから。
「伝えるつもりはなかったから、ずっと隠していたんだ。代わりに、君には僕が手錠をかけると心に決めていた」
「ひえ…」
不穏な言葉に思わず体が縮こまった。あの頃、バーボンのそばにいることが多かったのにはいくつか理由があるけど、端的に言えば信用してたからだ。思い起こせば近くでよく寝ていたし、無防備を晒した覚えも何度かある。
…なんてこと。
日本警察のお世話にならずに済んだのは、ジンに近しいポジションだったからか。
「だからこそ、ギムレットがジンに撃たれたと聞いた時は焦ったし、生死不明というなら意地でも探し出してやろうと思った。…4年間ずっとだ」
どこか哀しそうな声で言うものだから、なんだか悪いことをした気分になる。でも実際、あの時はああして身を隠すしかなかった。
「そうしたら、突然目の前に現れるし、おもしろくもない冗談言ってくるし…ずっと想っていた分、感情が振り切った」
「え、あれってそういうこと…?」
ポアロでのキスは、私を大人しくさせるための手段じゃなかったの…?
「やっぱり分かってなかったか」
「…だって」
悔しいけど腰抜けたし、バーボンは私の弱点を“知っている”から。
「まぁ…そうでもなければ、あんな無防備に車の中で寝たりはしないだろうし、…今日もここには来てないだろうがな」
「……っ!」
バーボンが言わんとしていることに気づき、椅子を蹴って立ち上がる。
「帰る!」
しかし、逃げるより先に手を掴まれた。
「放して──」
「悪い、怖がらせるつもりじゃなかった!」
その焦りに毒気を抜かれて、ぴたりと動きを止めてしまう。
「君の事だ、送らせてはくれないだろう。夜道を歩いて帰すわけにもいかない。…嫌がることはしないから」
青い瞳がじっと見つめてくる。本気で言ってるのが見て取れて、迷ったあげく、すとんと腰を下ろした。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時