Case.31 ページ39
バーボンは拘束を解き、フラフラと後退して向かいの壁にもたれる。
ああ、怠かった。
解放された手首を軽くさすって一息つく。だいぶ力が強かったから、たぶん赤くなってるだろうな。
馬鹿力め。
じとりと睨みつけてやると、バーボンは額に手を当てて呆然としていた。
…そんなに意外だった?
もちろん組織では上手く立ち回ってた自信はあるし、バーボンほどの目を欺けたのは潜入捜査官として誇らしい成果だとは思うけど。
それはさて置き、そろそろ本題に入らせてもらおう。
「バーボン。──いいえ、降谷零。貴方を公安側の重要なポストであると見込んで提案があるわ」
「好きだ」
「私達FBIと公安警察とで協力関係を結んだらどうかと──今なんて?」
なんだかとんでもなく場違いなワードが聞こえた気がする。
あれ?私、今すごく重要なこと話してなかったっけ?おかしいな。私の空耳かな?
「君が好きだ」
ああ、もう1回聞こえた。
さすがにこれは空耳じゃな──。
「………え、すき?」
さっきまでうつむいてた目の前の男が、真剣な顔で私を見つめてる。
「ああ、好きだ。ギムレット…いや、九条A捜査官」
パスケースのIDカードをチラつかせて、降谷零はそう宣った。
「…あの、私大事な話してたよね?」
「そうだな。僕も今大事な話をしてる」
大真面目に返してくるものだから、危うくそうか確かに大事な話だと納得しかけるところだった。
いや待っておかしくない?
「ええと、公安警察からの返答は…?」
「悪いが却下だ。たとえ君相手でも、協力関係は結べない。…君からの返事は?」
「え?えっと……保留で…?」
なんだろう。なんの話をしてるんだろう私達。とにかく私からの提案は蹴られたってことよね?
確かに秀一からは無理だと思うと言われたけど、二つ返事で断られるとは思わなかった。FBIと公安の溝はだいぶ深いらしい。
それで、私は今なんて答えた?
「保留か。なら、考えてはくれるんだな?」
「う、うん…?」
「ありがとう。良い返事が聞けるよう頑張るよ」
「が…頑張れ?」
いや、頑張れってなんだ。応援してどうする。
ダメだ、展開についていけない…。
大体、こんなの公私混同にも程があると思わない?普通この流れで告白する?ずっと黒だと思っていた相手に?
ぐるぐると考えている間に、せっかくだからと奥へ連れて行かれてお茶を出された。出されたからにはと、マグカップに入ったそれに口をつけると梅昆布茶だった。渋い趣味してる。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時