Case.30 ページ38
暗い夜道を歩いてバーボンに指定した場所へ行くと、既に見覚えのある白い車が停まっていた。
助手席に乗り込むとシートベルトを促され、締めた瞬間に車が発進する。
「そんなことしなくても、今日は逃げたりしない」
「…残念だが、疑ってかかる性分だ」
「…へぇ、それが素なんだ」
敬語じゃないバーボンって新鮮。目つきも全然違うし、秀一や私より別人だな。
「それで、用件はなんだ」
「先にどこか移動して。アンタが最も安全だと思う場所でいい」
「…それだと僕の家になるが」
まぁ、そうなるよね。
「別に気にしない。今は確実に情報が漏れない場所に行く方が大切だから」
前に連れていかれたのが家だったから、予想はしてた。どうせ向こうも聞きたいことはあるだろうし、時間も遅い。後を考えれば、その方が都合がいいはず。
そう答えれば、バーボンは分かったと言ってハンドルを切った。
ついこの前来たばかりのそのマンションは、MAISON MOKUBAというらしい。靴を脱いで玄関を上がった瞬間、腕を引かれて壁に押しつけられた。
「痛…っ！」
ぶつかった背中から鈍い衝撃が伝わってきて、思わず顔をしかめる。両手は頭の上で一纏めに壁に縫い留められて身動きが取れない。
乱暴ね…この前とは大違い。
車に乗った時といい、どうやら逃げたのが想像以上に堪えてるらしい。
「待つのはここまでだ。…用件を言え」
「…手、放してくれない？」
「断る」
だと思った。
仕方ないな…。
「…ジャケットの、左の内ポケット」
そう言ったら、バーボンはほんの少し躊躇うような素振りを見せる。
「…早くしてくれる？」
急かすと、ばつの悪そうな顔でジャケットに手を差し込んできた。こうも乱暴に扱ってきたくせにそこは気にするのか。
だったら、片手だけでも解放してよね…。
心の中でブツブツと文句を言っていると、バーボンがポケットからある物を引き抜いた。
それは、二つ折りのパスケース。
その中身を確認して、彼の目は大きく見開かれた。
「どう？バーボン。それが何か…分からないはずはないでしょう？」
驚愕をあらわにした彼は、嘘だろう、と声もなく唇を紡ぐ。
「ギムレットが…FBIだと……！？」
それに、私は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 825人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます！キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです！更新頑張ります！ (2022年5月19日 23時) (
レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー！ (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年5月18日 2時
