Case.29 ページ37
「うっわ、手強そう」
「あむぴに限って脈ナシなんてありえないって」
「大丈夫、私ら応援してるからね!」
「あむぴならできるよ!」
コソコソと小声で励まされた。
君達の応援が一番心に刺さったよ…。
口説けるものならとっくに口説いているが、それはさて置き。
あんな事をしたのに、もう一度僕の前に姿を現したということは、何か目的があるに違いない。
こうも堂々とやってくるなんて、よほど有益な何かを持っているのか。
頑張れと声援を送ってくる女子高生達のテーブルを半笑いで離れ、カウンターでケーキの準備をする。その流れで、チョコレートタルトを1つ、ギムレットの前に置いた。
「…何これ」
「僕からのサービスです。この前のお詫びに」
鉄壁の安室スマイルで返すと、彼女は不機嫌そうな面持ちでタルトを一口食べる。
「………」
更に不機嫌な顔になった。隣の梓さんが青ざめて服を引っ張ってきたが、これは悪い反応ではない。
「お味はどうです?」
「………………おいしい」
たっぷり時間を使って小さく呟いた。
彼女はご機嫌取りで好物を出されると、大抵不機嫌そうな顔をするのだ。許したくないのに手を出してしまう二律背反に苛まれているらしい。
「それ、僕が作ったんですが…お口に合ったようで良かった」
「…アンタ、パティシエでも目指してるわけ?」
「まさか。少し凝り性なだけですよ」
肩を竦めると、呆れた顔でため息を吐かれた。
彼女が大人しくタルトを口に運んでいる間に、先程のオーダーを運ぶ。女子高生達に知り合いだったのかと問い詰められ、昔の知り合いだと答えたら一層大興奮された。なんで君達が楽しそうなんだ。
その間にタルトを食べ終わったのか、ギムレットはさっさと会計をして店を出てしまう。
追いかける余裕もなかったな…。
仕方なく彼女の食器を片付けていると、梓さんがそろそろと近づいてきた。
「…安室さん、今日はこの前みたいに無理やりなんてダメですよ?」
「…え?」
なんの話だ。
「とぼけても無駄です。このあと、またあの人と会うんですよね?安室さんの上がりの時間知ってましたし」
「!……ええ、そうなんです。でも大丈夫ですよ。この前は突然で驚いてしまって、つい先走っただけですから…」
ならいいですけど、と梓さんがニヤつく。どうやら信用されていないらしい。その視線を躱しつつ、アイスコーヒーのコースターをそっと捲った。
やはり。
そこには、時間と場所、そしてギムレットのサインが書かれていた。
840人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時