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Case.28 ページ36

ポアロが賑やかになるのは、放課後の女子高生が数組来店してくる頃合いだ。
数十分前に気合を入れた梓さんが忙しそうに動き回っているのをよそに、噛み殺しきれなかった欠伸が出てしまった。
ああくそ、さすがに寝不足だな…。
ギムレットの件で、風見を含む公安の人間を数名動かしているが、一向に足取りが掴めない。僕も合間を見つけて捜索しているが、結果は同じだった。それが数日も続けば、寝不足になるのは当たり前だ。

「あむぴ、注文お願い!」
「はーい」

ご丁寧にご指名頂いたのは、女子高生の中でも常連のグループ。眠気を吹き飛ばしてオーダーを取りに行く。ケーキの注文が入り、確認の為繰り返していたところに来店を告げるベルが鳴った。

「──以上でよろしいですか?」
「あ、すっごい美人」
「はい、“すっごい美人”ですね……は?」

流れで思わず復唱してしまった。
まずい、頭が働いてない。今僕なんて言った?
ぱっと顔を上げると、来店したばかりの人物と目が合って、今度は思考が固まる。
…なんで。

「え、あむぴがそんなこと言うなんて初めて聞いた!」
「じゃあ、あむぴのタイプってあんな感じ?」
「ウソ、さすがにレベル高すぎじゃん」
「ショックなんだけどー」

彼女達が口々に何か言ってるが、まったく耳に入ってこない。
だって仕方ないだろう。この数日、寝る間を惜しんで探していたその人物が、再びこの店にやって来たんだから。
ギムレット…!
持っていたペンがミシッと嫌な音を立てる。
なんで彼女が。まさか、僕と交渉でもしようというのか。

「うわ、あむぴガン見じゃん!」
「まさか一目惚れ!?」
「……、え」

聞き流せない単語が耳に飛び込んできて、巡り始めた思考から引き戻される。
だが、それに反応したのがいけなかったのだろう。彼女達は完全に僕が一目惚れしたと思い込んでしまった。

「マジかー、結構本気であむぴ狙ってたのになー」
「でも、ああいう美人はあむぴぐらいじゃないと釣り合わないかもね」
「確かに。あれくらいレベル違えば諦めもつくかも…」
「き、君達…」

声が大きいから他の客にまで丸聞こえだ。なんなら本人にも届いているだろう。なんだか冷や汗が出てきた。
いや、惚れているのは間違いないけど。
他の客からの視線が痛い。何より梓さんからの熱い視線が突き刺さる。そのくせギムレットは、カウンター席に座って1ミリもこっちを向かないどころか、アイスコーヒー1つと注文まで入れていた。
どうしよう心がつらい。

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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時

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