Case.27 ページ29
避妊薬を服用していたってことは、もちろん合意じゃなかったはずだ。
赤井さんが言葉を濁したのも、この話が絡んでいるとみて間違いない。
「それで、彼女はどうしてるのよ。早く教えてくれる?」
「…実はな…」
簡潔にAさんの事を話し、今は工藤邸に住んでいることを伝えると、灰原は気が抜けたように肩の力を抜いた。
「彼女が、FBI…?…正直、ちょっと信じられないわ…」
「…そんなに意外か?」
ということは、Aさんは本当に上手く正体を隠してたってことなんだろうか。
「ジン嫌いで有名だったって言ったでしょう?それ、彼女を知る人物が口を揃えて“あの殺意は本物だ”って言うくらいだったから、潜入のための演技だったとは思えなくてね。…それに、一度聞いてみたことがあるのよ。どうしてジンの命を狙うのか」
「…Aさんは、なんて?」
「理由は教えてくれなかったわ。代わりに、彼女はこう言ったの」
───“The time is out of joint.”
「“この世の関節が外れてしまった”───か」
その言葉は、シェイクスピア作『ハムレット』に登場する一節。
父王を殺されたことで、世の中があるべき流れから外れてしまったことを嘆く、王子ハムレットのセリフだ。
そして、『ハムレット』は復讐の物語。
それをわざわざ引用するってことは、もしかして。
「Aさんは、ジンに対して個人的な恨みをもってたのかもしれねぇな…」
「…どうかしらね。でも、彼女の受けた仕打ちを考えれば、徐々に殺意が芽生えたとしても不思議じゃないわ。…特に、組織に引き込まれた直後は酷かったって話よ」
「…そうか」
きっと、動機としてはなり得るんだろう。
理解は、出来ないけれど。
「でも、生きてるならそれでいいわ。ずっと気にかかってたから」
「お、おう…」
それっきり、灰原は黙り込んでしまった。
収穫は大きかったけど、心の内に留めておいた方が良さそうだな。
おそらく、Aさん本人からは聞き出せない話だ。
彼女は今も、ジンを殺したいと思っているのだろうか。
834人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時