Case.1 ページ3
ひったくり、と誰かが叫んだ。
それは大好きなコーヒーチェーン店で、本日発売と銘打たれたイチゴのフラッペを片手に店を出た直後のこと。
ちらりと目を走らせると、通りの向こうから、明らかに自分のものではないバッグを手に疾走してくる男が1人。
「んー…」
どうしようかな。
近づいてくる男を眺めながら、フラッペのストローに口をつける。
「ん、おいし」
トッピングしたチョコソースとチョコチップが良い感じに効いてる。やっぱりイチゴとチョコの組み合わせに間違いはないわね。
ショルダーバッグを片手に舌鼓を打っていると、男がすぐそこまで迫っていた。
「女ァ！そこどけぇ！」
必死の形相で走ってくる。
仕方ないか。
「どけって言ってんだろ！」
立ったまま動かずにいる私を押しのけようと男に肩を掴まれた──刹那。
バッグの肩紐を握り、体を回転させながら遠心力を使って振りかぶる。
「……え、」
「──ふっ」
今更気づいたところでもう遅い。
短く息を吐いて、その顎の下からバッグを振り抜いた。
「がぁっ…！？」
「………」
仰け反った男は、そのままガクンと膝をつき、倒れて動かなくなる。しゃがんで顔を覗き込んでみると、白目を剥いて気絶していた。
「まったく…気安く触らないでよね」
男の額をピンと弾いて、ひったくってきたらしい女性物のバッグを取り上げる。
「あ、あのー！」
「…ん？」
遠くから聞こえた声に顔を向けると、女の子が2人、息を切らして走ってきた。
「それ、私のバッグで…、取り返してくれたんですか…？」
「ああ…これ貴方の？」
カチューシャをした茶髪の子がこくこくと頷く。見た感じは高校生だけど、このバッグはなかなかのブランド物よね。学生のお小遣いで買えるの？
まぁいいや。気にしたって仕方ないし。
「はい。中身は無事だと思うけど、一応確認して？」
「あ、ありがとうございます！」
バッグを渡すと、彼女は慌ただしく中を確認する。財布の中身も無事だったらしく、ほっと息をついていた。
「大丈夫みたいね。それじゃあ、通報とかは自分達でできる？私、この後人と会う約束があって…この男は気絶してるから、しばらくは目を覚まさないと思うし」
「は、はい！」
「大丈夫です！」
「そう。じゃあ、気をつけてね？」
ショルダーバッグを肩にかけ、ひらりと手を振ってその場を後にする。
あの子達には悪いけど、あまりこの国で警察に関わりたくない。それに、人に会うっていうのも嘘じゃないしね。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます！キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです！更新頑張ります！ (2022年5月19日 23時) (
レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー！ (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年5月18日 2時
