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力任せに仰向かされ、こじ開けられた口内にぬるりとした感触が押し入ってくる。

「…んんっ!」

反射的に身をよじって逃げようとしたけれど、それもただジンを煽るだけで抵抗にもならない。

「ん、…ふ、ぁ…っ」

差し込まれたそれに舌を絡め取られ、上顎を擽られながら出したくもない甘ったるい声が鼻を抜ける。意思とは関係なしに身体が反応して、悔しさで涙が出た。
ああ…なんて惨めなの。

憎くてたまらないこの男を殺すため、私は9年もの月日を注いできたのに。

…やっぱり、殺しておくべきだったんだ。
初めてこの男を前にしたあの時、躊躇わずに殺しておけば。そうすれば、こんな死の間際に、成すすべもなく蹂躙されることもなかっただろう。
これを惨めと言わずしてなんだというの。
ぽつりと水が地面を叩き、それを皮切りに堰を切ったような雨が降り始めた。見る間に水を吸って重くなった服が体温を奪っていく。気力も体力もとっくに限界を迎えていて、今意識を保てているのは、これ以上この男に奪われてなるものかという意地にすぎない。
ジンもそれを分かってるんだろう。前髪を掴み上げていたはずの手が、いつの間にか背中にまわって力の入らない体を無理やり支えていた。

「は、ぁ…ジ、ン…」

僅かな息継ぎの合間に名を呼べば、ジンはぴたりと動きを止めた。ぐらりと頭の芯が揺れ、体を預けるようにして倒れ込む。
もう意識を保つのも限界だ。血も流しすぎた。瞼を閉じたが最後、目覚めることはないだろう。
だったら。

「っ、」
「…ギムレット?」

力を振り絞ってジンの腕から逃れた。ばしゃっと水音が鳴り、体が地面に転がる。
この男の腕の中で死ぬくらいなら、泥水にまみれて死ぬ方が余程良い。

「……、」

はくはくと口が動く。
ジンに消えろと言ってやりたかったのに、あいにく声を出す力も残っていないらしい。幸い、転がった反動で視界に入る位置からは外れている。それくらいは妥協しよう。
だって。


───“To be, or not to be, that is the question.”


これでやっと、この苦しみから解放されるのだから。


意識が薄れていく。
雨音が遠ざかり、沈黙が私を支配する──その刹那。


「次に会う時が最後だ。…覚えておけよ、ギムレット」



あの男は、私を地獄へと引きずり戻した。

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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時

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