Case.0 ページ1
銃声が鳴り響く。
足元に落としたスマホが砕け、破片が飛び散った。
「…これで、終わり…」
弾切れの拳銃を放り投げ、肩で大きく息をする。
迷路のようなコンテナ置き場を抜けた先に待っていたのは袋小路だった。
最後の悪足掻きでここまで逃げてきたけど、もう逃げ場は無い。ここで死ぬなら、せめて正体だけは隠し通そうと、最後の弾丸でスマホを壊した。
「鬼ごっこは終いか、ギムレット」
「っ、」
背中にかけられた死神の声に振り向けば、銀髪をたなびかせる黒いコートの男が1人。
「……ジン」
悔しげに呟いた私に、ジンはニヤリと嗤った。
「…やるなら、ひと思いに殺して。2年もアンタのお遊びに付き合ったんだから、それくらい聞いてくれてもいいでしょ」
「…残念だが」
「っ、」
ジンの向ける拳銃が、ピタリと狙いを定めた。
「“ギムレットには早すぎる”」
刹那、鋭い発砲音が鳴り響き、右肩に強烈な痛みが突き抜けた。
「ゔぁ…っ!!」
呻き声がもれる。思わず掴んだ左手の指の隙間から、生温かい血が腕を伝った。
“ギムレットには早すぎる”
最悪だ。
永遠の別れを惜しむ有名なその言葉は、今の私にとって地獄の始まりを意味する。
じわじわといたぶって殺すつもりか。
一歩後ずさった足が、じりっと砂を踏みつけた。すかさず発砲音が鳴り響く。
「ぁぐ…っ!」
今度は脚を撃ち抜かれた。想像以上の痛みに、堪らずその場でうずくまる。歯を食いしばって、荒い呼吸を繰り返した。気を抜けば、一瞬で意識を持っていかれそうだ。
「どうだ。お前はそうは思わねぇか?」
「ふざ、けるな……っ」
あらん限りの憎悪を込めて睨みつけると、ジンは無造作に私の前髪を掴んで上を向かせた。顔の周りにばらばらと銀髪が零れ落ちてくる。
「っ、」
ひくりと息を呑む。その光景は、身体に覚えこまされた恐怖を想起させる引き金だ。
体が、凍りついたように動かない。
「や…、」
威勢を失った声がもれてしまい、ジンはそれを嘲笑うかのように口の端を吊り上げた。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時