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Case.19 ページ21

靴を履いて大通りへ走ると、ちょうど良く流しタクシーを見つけて転がり込んだ。

「お客さん、どちらまで…」
「いいから出して!元カレに追われてるの!!」
「は、はい!!」

怒鳴りつけると、タクシーは甲高い音を立てて急発進した。
なんとか息を整えて後方を覗く。バーボンがタクシーに気づき、悔しそうな顔をするのが見えた。多分、これ以上深追いはしてこないだろう。
つ、疲れた…。
ずるずると背もたれを滑り、深く息をつく。

「お、お客さん…大丈夫ですか?」
「あ…はい。さっきはすみません」

謝ったら、いいんですよ大変でしたねと労ってくれた。
優しさが心に沁みる。
とりあえずタクシーにはしばらく街道を流してもらい、その間に秀一が迎えに来てくれることになった。
…そうそう、忘れるところだった。
ニットの裾裏に指を差し込んで、引っかかったそれをゆっくりと剥がす。
それは、小さな黄色いシールだった。


──ボク、江戸川コナンっていうんだ!


無邪気に笑った眼鏡のボウヤ。
背中を押す園子ちゃんに便乗して、服の裾を引いて喫茶店まで案内してくれた。
シールの中央はわずかに盛り上がっていて、何かが内蔵されているのが見て取れる。
発信器か盗聴器か…ま、どっちでもいいや。
座席のシートに貼り付けて、タクシーには指定したポイントで降ろしてもらう。迷惑料とチップ代わりに万札を渡しておいた。
タクシーを見送って路地へ入ると、沖矢昴の姿でマスタングに寄りかかる秀一を睨みつけた。

「アンタね…何が《Good luck》よ!私は《Help》って意味で連絡したのに!」
「必要ないだろう。彼がお前に危害を加えるはずがない」
「無理やりキスされた上に家に連れ込まれたんだから無事なはずなくない?」

そう言うと、秀一は突然片目を開いてこっちを見た。

「…何よ?」
「いや…大丈夫なのか?」
「はぁ?大丈夫じゃないって言ってんのよこっちは」

人の話聞きなさいよ。その耳は飾りか?
凄んでみせたら、秀一は堪えた様子もなく思案げに顎をつまんだ。

「…なるほどな。組織にいた頃から、彼に気を許しているとは思っていたが…そういうことだったか」

どういうことよ。
意味が分からない。今の会話で何を察することがあるのか。
…もういいや。

「なんでもいいから、さっさと戻って」
「ふっ…了解」

助手席に乗り込んで目を閉じる。
寝る態勢に入った私を見て、秀一は相変わらずだなと呟いていた。

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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時

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