Case.12 ページ14
一体何事かと顔を向けると、女子高生が2人走って来るのが見える。
見覚えのある光景ね。
違うとすれば、小さな男の子を連れているところか。
「あのっ、私、昨日ひったくりに…っ!」
「あー、うん。覚えてる。ひったくりにバッグ盗られた子よね」
息切れして言葉の続かない女の子をなだめて、3人の息が整うのを待つ。
すると、茶髪の子はぺこっと頭を下げてきた。
「き、昨日はありがとうございました!」
あら律儀。
「気にしないで?ちょうど目の前にいただけだし」
「でも大事なバッグだったから、ちゃんとお礼がしたくて…!」
「…もしかして、私の事探してたの?」
まさかと思ったけど、どうやらその通りらしい。
「よく見つけたわね。私、特に目立つ特徴ないのに」
カラコンしてなかったらまだ違っただろうけど、それさえ隠してしまえば人探しに使えるような特徴はない。
「実は正直手詰まりで…。すぐそこの喫茶店で探偵してる人がいるから、ランチがてら知恵を借りようと」
「へぇ…」
なるほど、偶然だったか。
「ねぇねぇ、お姉さん」
「うん?」
足元から声をかけられて顔を向けると、男の子が私を見上げていた。
「どうしたの、ボウヤ?」
立ったまま話すのも憚られるので、しゃがんで目線を合わせてみる。そんなことをされるとは思わなかったのか、男の子はちょっと驚いた顔をした。
「えと、もうお昼ご飯は食べた?」
…お昼ご飯?
「このフラッペがランチ代わりかな」
片手に持ったカップを掲げて見せれば半笑いが返ってきた。健康に悪そう、という副音声が聞こえる気がする。
舐めるんじゃない、こちとらファーストフードの国育ちよ。きっとそのあたりは丈夫に出来てるわ。多分。
「じゃあ、一緒にランチしませんか!?お礼に奢ります!」
「ええ…?」
茶髪の子がキラキラした眼差しを向けてくる。そういえば、お礼がしたいって言われたっけ。
「気持ちはありがたいけど、本当に気にしなくていいのよ?わざわざ探してくれたことだけで嬉しいし」
「いーえ!それじゃあ私の気が済まないんです!ほら、喫茶店はすぐそこだし!」
ぐいぐいと背中を押されて、なんだか強制連行みたいになってきた。
押しの強い子だなぁ…。
日本ではあんまり人付き合いするつもりはなかったんだけど、これはもう逃げられそうもない。
仕方ないか。
少し緩くなったフラッペのストローに口をつけ、こぼれたため息を誤魔化した。
816人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時