溺れるナイフ ページ25
"えっ？"
突然の告白に戸惑う私。
"あはは、ちゃうちゃう。演技でな？普段から演じてみーひん？俺がコウ。Aは夏芽でさ！"
そう言ってくしゃっと笑った菅田。
"夏芽ちゃんは、コウちゃんのことが好き...。"
そう呟いてみる。
"多分Aがうまくできひん理由って、演技にコウが大好きー。って気持ちが乗っかってないからとちゃう？"
"そうか...演じな。思うばっかで、私自身が夏芽ちゃんになりきれてなかったんやな。"
...菅田を見つめるAの瞳がわずかに変わった気がした。
次の日の朝。
現場にはハイテンションで騒ぐ見知った顔がおった。
"おはようございますぅ！おはようございますぅ！あ！A！おはよー。元気かー！"
"おはよーしげ、いつ来たん？"
まだ早朝やのに、目の前のしげはエンジン全開でめちゃくちゃ元気やった。
"ちょい前かなー？"
と言う割にはもう完全に現場に溶け込んでいて、これもしげの才能かな。と思った。
"おはよー。うっさいの居るわー。誰こいつキャスティングした人ー。"
菅田は眠そうな顔で重岡を見つけると近づいてきた。
"なんやねん！楽しくてええやんけ！！"
そう言って重岡が怒る。
自然と笑顔になる現場。
"おはようございますー。"
と上白石さんも合流して、撮影が始まった。
4人での教室のシーンを撮り終え、次の撮影に向けて車で移動する。
"今日は順調にいったねぇ。"
と車を運転するスタッフさんが私を見て言った。
"はい！撮影押してたんで、良かったです。"
撮り直しもなく撮影が順調に進んでいたおかげで、今日は無事に終わることができそうだった。
重岡side
今はAと菅田のシーンが撮り終わるのを、カメラの後ろで上白石さんと待ってる。
"ほんとに夏芽ちゃんとコウちゃんみたい...。"
と上白石さんが呟く。
"そやなぁ。"
俺も食い入るように2人の演技に見入ってしまった。
2人を中心に何台ものカメラが周りを囲う。
中心でコウと夏芽を演じる2人がキラキラ光って見えてまるで...
"違う人..みたいやな。"
ジャニーズWESTのメンバーとして俺の隣にいるAの姿はそこにはなく。
今そこで演技をする彼女は、なんだかいつもとは違って特別に見えた。
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作者名：まる | 作成日時：2019年1月19日 21時
