全ては火にくべられた ページ28
多分これでよかったのだ。
こちらを一見もせず階段を駆け上る少女を見て心の中で呟いた。
胸ポケットから一枚の紙を取り出す。おもちゃと小人族の反乱計画を記したそれを、愛用のライターで火を付けた。
あっという間に燃え尽きたそれを床に落として踏みにじる。
「さァて、戦況は一体どうなってるやら……」
ドフラミンゴが圧勝しているなら、どこか隠れて鳥かごが外れるのを待つしかない。
でも、もしドフラミンゴが麦わら一団に敗北したら……駐在してる海軍によってドンキホーテファミリーは皆お縄につくだろう。
そのとき、あの少女も捕らえられる可能性は十分ある。何せ、天夜叉の子どもで天竜人の血筋。見逃す訳もない。
海軍から逃れたとしても、街にはドフラミンゴを恨む国民達がいる。素性がバレたら、悲惨な未来は避けられない。
飛び立つ鳥後を濁さず、というわけではないが……
「………まあ、やれるだけやっとくか」
くるりと踵を返して、奥の曲がり角を左に曲がる。
あの小娘は色々勘違いしていたが、別にこの地下通路の出口は一つだけではない。地殻変動で大半が崩れてしまったが、まだ生きている出口はある。
「まずはドフラミンゴの部屋で……一応グラディウスの部屋も燃やしとくか。教育係らしいしな。アイツの部屋は……最後でいいか」
この王宮も、世界政府のガサ入れが入る筈だ。いくらドフラミンゴが情報操作していても、この王宮にはあいつの存在を裏付ける証拠が残っている。
いちいち探す時間はない。燃やせば全部灰だ。
「ああくそったれ。なんでこんな一銭にもなんねェことを……」
誰の依頼でもない。ただ自分の自己満足の為に見つかる危険を犯してまで突き進む動機。
……ああ、知りたくない。どうでもいい。これっぽっちの興味もない。
だが、この世界に色がなくなるのは、少し惜しいような気がした。
通路の壁を叩けば、隠し扉が現れた。
この先は王宮のプールサイド付近に繋がっている筈だ。
「…………」
目を閉じれば浮かぶ、青い瞳。
闇の中でも僅かな明かりで煌めいて、きっとおれが壁にならなければ、あのしたっぱどもはこの青に気が付いていただろう。
「あ"ー……やっぱ拐っとくべきだったか」
アイツを抱きしめたとき、あの色彩を独占していたのはおれだけだったのだから。
まだ跡が残る首を擦ってため息をついた。
きっと、おれはこの先の人生で再び"色"に見えることはないだろう。
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本の虫(プロフ) - ぴのさん» ご指摘ありがとうございます!!またやらかしましたね!!ごめんなさい!!トーテムポールの親戚だと思います。本当にごめんなさい…… (2019年10月30日 18時) (レス) id: 37015c2fbe (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 取り調べ報告書のキャラの名前が違いますよ。トーレ厶ボールって誰ですかwww面白くて吹いたw (2019年10月30日 17時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
ひなな(プロフ) - この物語ほんっっっとうに面白くて大好きです!!これからも応援してますので更新頑張ってください(o^∀^o) (2019年10月20日 13時) (レス) id: 7b6c2dd18e (このIDを非表示/違反報告)
本の虫(プロフ) - 暇人で眠人さん» ご指摘ありがとうございます。訂正しました。完全に素で間違えていました……。キャラの名前を間違えるというファンにあるまじき失態……過去の自分を殴りたいです…… (2019年10月18日 23時) (レス) id: 37015c2fbe (このIDを非表示/違反報告)
暇人で眠人 - 作者さん!セッショウの所!イッショウですよ!間違ってたらすいません! (2019年10月18日 21時) (レス) id: a9a348183f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本の虫 | 作成日時:2019年5月1日 9時