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しまった。


これは聞いてはいけない。
何度も蓋をしていたのに、言葉にしてしまった。
咄嗟に口をつぐんだものの
彼女は不思議そうな顔をしている。

ここからどう切り返せばいいだろう。
『勉強不足です…』

少々の嘘をついた事になんだか申し訳なくなった。
彼女の視線を感じつつも
地面に落とした視線を上げられなかった。

「おなかすいた、は」
「韓国語でなんて言いますか?」

少し間を置いた後彼女から質問が投げられた。
顔をあげればバチっと目が合う。

『ぺごぱ、です』
『でも』
『ひとつしか意味がありません』

結局、ものすごく遠回しに聞いたのと同じじゃないか。

ただ、さっきついた嘘があとを引いて
これ以上嘘を重ねられなかった。

沈黙が続くほど後ろめたさから逃げられない。
恐る恐る彼女の視線を伺う。

あれ、?

「あー、そっか」なんて言いながら頷いている。

どういう解釈なのかわからないけど
思っていた反応とは、まるで違っていた。


うーん、と唸りながら
むしろ何か伝えようとしてくれているようだった。

「日本語のお腹すいた、も」
「多分一つしか意味がないと思います。」

僕にわかるようになのか
噛み砕いて説明してくれている。

ああ、本当に申し訳ない。
帰国したらもう一度日本語を勉強しないと。

「これは本当に恥ずかしいのだけど」
そう言ったあとやや俯いて、少しの沈黙が流れた。

『…無理しないでください』
僕に言えることはこれくらいだった


けれどそのあとすぐ「いえ、」と返ってくる。


「心に穴が空いたんです」
「それをお腹空いてるせいにしたかったんです」
「ミステリアスな言い方しちゃいましたね」

ふふ、と笑っているようだけど、
全然笑っているようには見えなかった。

『ごめんなさい』

深々と頭を下げる。
自分のことは踏み込まれたら困るのに
彼女に土足で踏み入るような真似をしてしまった。

「そんな!」
「謝らないでください!」
「あ、頭をあげて!」

一呼吸おいて、ゆっくり頭を上げる
視線を合わせれば左右に手をブンブンと振っている
まるで一大事のような慌てぶりだ。

かぶっていた帽子を徐に取っ払う。
勢いで目にかかった前髪をかきあげて
彼女と目線を合わせる。

『僕は、』
『…ヒョンジンと言います』

「ヒョン、ジンさん?」

脈絡のない行動にまた驚いているようだった。
いや、これはどちらの反応なのだろうか。


『はい』
『ファン・ヒョンジンです』

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設定タグ:ヒョンジン , StrayKids   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:csm | 作成日時:2024年3月11日 23時

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