お腹すいた (ページ8)

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”今日はお腹、減ってるかもです”
減ってるなんて返事は想像もしていなかった。

よかった。
今日もコンビニへ立ち寄っておいて正解だった。
急いで買っておいたメロンパンを差し出すと

メロンパンを見るなり上下に肩を揺らしている。
よく見ると、いたずらっ子みたいにころころと笑っていた。

僕はまたなにか、的外れなことをしてしまったのかもしれない。
やっぱり日本語は難しい。

「コーヒーはお好きですか？」
唐突に投げかけられた言葉にハッとする
目の前には缶コーヒーが二つ。
一つはこちらに向かって差し出されようとている。

『はい』そう答えた後、すぐには受け取らず
自分のコンビニ袋から彼女が持っている缶コーヒーとは
別のメーカーの缶コーヒーを二つ取り出した。

僕たちの目の前には四つの缶コーヒー。
奇跡ってのは一度に何回も起こるものなんだろうか。

「あっ、じゃあ」
そう言いながら片方のコーヒーがコンビニ袋へしまわれようとしている。

『交換しませんか？』
『これと、それ』

コンビニ袋の入り口で一瞬留まった缶コーヒーはそのまま納まった。
かと思えば「そうしましょう」と言って
空いた片手で僕から缶コーヒーを受け取り、
彼女のもう片方に残っていた缶コーヒーが僕の手に優しく乗せられた。

なんだろう、このプレゼント交換みたいな嬉しさは。
彼女に貰った缶コーヒーをゆっくり見つめた後コンビニ袋へしまった。

『大切に、します』

僕の言葉に彼女の目が大きく開いたと思ったら、
今度は口元を手で隠して肩を震わせている。

「飲み物だから、」
「消費期限までに飲んでくださいね」

一気に体温が頭の上までのぼり
視線を横へそらした。

『…そうします』
僕の声は何とか聞こえたのか「私も大切にします」と
先ほどしまわれた彼女のコーヒーとすでに入れ替わっていた

ああ、すごく子供っぽい所を見せてしまった気がする。
もっとスマートにできたはずなのに

僕はいつもこうだ。

格好つけきれない情けなさに肩を落としていると
目の前にお菓子が差し出された。

「これは食べたことありますか？」

韓国で見た事あるお菓子だ。
でもパッケージが違う。

『…ペペロだ！』
「ペペロ？」

そう言いながら不思議そうに首をかしげている。

『韓国に、似たお菓子があります』

僕の言葉に何か納得したように頷くと
彼女はまたコンビニ袋に手をしずめた。