お腹すいた (ページ7)

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うーん、この調子だと少し早くに着いてしまう気がする。
コンビニ袋を片手にあの橋を目指す。

昨日と同じくらいの時間を目処に
コンビニに立ち寄ることも逆算して家を出たはずなのに
計算は大きく間違って一時間ほど早くに辿り着いてしまいそうだった。

何だか楽しみにしすぎているみたいで恥ずかしいではないか。

とはいえ、彼は私がいつから居たのかを知らないだろうし、
早くついてしまう分には問題ないか、と
遠くに見えかけた橋を見つめながら足を進める。

コンビニで買ったお菓子と
なんとなく缶コーヒーを二つ。
歩くたびに缶のぶつかり合う音と歩みを合わせ
少しのハミングも口ずさみながら向かえば
あっという間に橋の入り口に差し掛かった。

昨日より一時間早くてもさすがに人は見当たらない。
いや、向こう側から一人歩いてくる影が見える位だ。

私と同じようにコンビニ袋をぶら下げて向かってくる人が一人。

深夜のコンビニは誘惑が多いよね、よくわかる。
私はあなたの夜食パーティを心よりお祝いいたします。

心の中でクラッカーを鳴らしていると人影がはっきりしてきた。

「『あっ』」

人影は同時に立ち止まり深く頭を下げた。
昨日とはまた違う帽子を深く被った、顔の見えない男性。
『あにょはせ…あ、こんばんは』

「こんばんは…」
釣られて私も頭を下げる。

一時間早くてよかった。
そう胸をなでおろしていると、
『奇跡みたい』と、
ドラマでしか言わないような言葉が飛んできた。

確かに、奇跡みたいではあるけれど
あまりにロマンティックな言い回しでむずがゆい。
お国柄的によく使うのだろうか。
追及しても分かりようのない事をもんもんと考えていた。

『あの』
『今日は、その…』
『お腹すいてますか』

言い切るまでにどんどん声が小さくなって
さらに帽子を深く被る。

昨日話した事はリセットされたのかもしれない。
そう思えるほど、初対面時くらいぎこちなかった。

「今日はお腹、減ってるかもです」

少しでも彼の肩が解れるよう、返事をしてみる。

すると彼は少し驚いたようにこちらを見つめた後、
手に握られていたコンビニ袋から昨日とは違うメロンパンが出てきて
思わず笑ってしまった。
彼は今日もメロンパンを食べたくなったのだろうか。

「冗談ですよ」
そう言いつつ私もコンビニ袋から缶コーヒーを二人分取り出す。

「コーヒーはお好きですか？」
そう聞くと、
また豆鉄砲を食らった顔をした後『はい』と返ってきた。