お腹すいた (ページ6)

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明日開催される公演のリハーサル真っ只中
初日ということもあり、念入りに確認する。

STAYの心に響くようなパフォーマンスをしたい。

「ヒョン、調子いいね」
かわいいアギパンがニコニコしながら褒めてくれるもんだから
お返しに目一杯こね回しておいた。

『イエナは今日もアギパンだね～』
「あー！もう、さっきの取り消し！」

そう言いながらこね回された髪を整えどこかへ行ってしまった。
入れ替わるようにしてチャンビニヒョンの大きな声と身体が近づいてくる。

「ひょんじなぁ～！」
あまりに声が大きいのであからさまに耳をふさいでみせた。
近付くほどボリュームの上がるヒョンがいつも通りで可笑しかった。

リハーサルを終え、最終確認も終えた頃には
日が落ちる間際だった。
乗り込んだ移動車から見えた夕日がとてもきれいで
簡単に何枚か写真を撮った。

「ヒョンジナ」
声をする方へ顔を向けると、
今朝は構ってくれなかった綺麗な顔がこちらを見つめている。

「わかったの？」
『ん、なにが？』

主語のない質問に少々間を置いた後『あー』と、思い当たったことを浮かべ

ううん、と首を振って返した。

今朝はあんなに興味のなさそうな素振りだったのに
ちゃんと気にしてくれているあたり、リノヒョンらしいというか。

「そう、俺も知らない」

なんだ、それなら僕が知らなくても仕方ない。
知らないのが当然のような気までする。

あれだけ調べて出てこないんだから
この答えは彼女しか知らないものかもしれない。
そう考えれば多少は納得できた。

うんうん、と

大きく上下に頷けば
横からヒリヒリした視線を感じ

冷ややかな目でこちらを見るリノヒョンと目が合った。
そんな顔しなくても、悪い事は考えていませんよ。

窓側に頭を預け、沈んでゆく夕日に視線を戻した。

彼女は何時ごろ橋に現れるだろう。
そもそも来てくれるだろうか。

まともな約束をしていない訳で、来ない可能性も否定できない。
僕が彼女の立場だったら、どうするだろう。

いや、行くと思う。僕なら。
昨日と同じくらいの時間に。

だけど少し早めに。

今日はお腹、すいてないと良いな

心地いいリズムで揺れる車の中
とたんに重くなった瞼をゆっくりと閉じた。