お腹すいた (ページ5)

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自宅に着いてから眠るまでに時間はかからなかった。
外が明るくなるのにも時間はかからなかった。

部屋に響く軽快な音を頼りに布団から腕だけを投げ出す
どこにあるの、私の携帯電話。
確かこの辺に置いたと思うんだけど

あった。

すぐにタップし大きな音を止めた。
このまま二度寝したら、次目が覚めるのは朝ではないだろうな。

ブラインドから漏れる光で起きる朝はとても気持ちがいい。
規則正しく睡眠をとっていればの話だけど

携帯電話に皺くちゃのウインクをしながらメールの画面を開く。

おはようの文字はない。
それはそうだ。私たちはもう、互いを確認し合う仲ではない。
ただいつもの癖で自然と探してしまった。
放った携帯電話がベッドの上で跳ねる。

朝から大きくため息が出た。
大丈夫、こういうのは大抵時間が解決する。
頭ではわかっているのだが、心が追いついていかない。

気持ちを落ち着かせ、もう一度携帯電話を触る

”『あしたもいますか？ここ』”

そうだ。

昨晩すぐに眠れたのはある意味、彼のおかげかもしれない。
お腹を減らした知らない人に自分の食べ物を差し出せる人。

「…ふふ」

困った人がいたらほっとけないのかな
なんにせよ心の温かい人だろう
こちらまで温かくなった気までした。

「何時に行ったら会えるだろう…」
さすがに確認しておくべきだった。
約束はしたのに、肝心な時間は決めずに別れた。

名前も知らない、連絡の取りようもない人と
多数決を取れば行かない選択をする人が大半のような
曖昧すぎる約束。

だけど。
…なんとなく彼は、来るような気がする。
そうであってほしいと思う私の都合だろうか。

昨晩と同じ時間くらいに行ってみよう。

頭の中で一日のスケジュールをおさらいして
仕事に向かう支度を始めた。

少々前から繁忙期を迎えていて
仕事に没頭できるのはちょうどよかった。
心が追いつかない時は何かに夢中になるに限る。
明日は休日だし、少しくらい寝不足でも問題はない。

無意識のうちにメールフォルダを開かないように
私用携帯は電源を落とした。

そういえば、メロンパンの彼は韓国の方だったな
唐突に思い返す。

お昼休みにはコンビニへ行って
彼のコンビニ袋には入っていなかったお菓子を買っていこう。
昨日は沢山買ってたみたいだから
食べ飽きちゃうかもしれないけど
保存もできるようなもので重たく感じないものを

彼への勝手な感謝をこめて。