できのいい後輩 ページ3
「い、急いでご飯作るわ」
そう言って居間にいくと不格好な卵焼きが机にならんでいた
「なんだこれ」
「俺が作ったんだよ!」
得意そうに胸をそらすチョンロ
「もう、小学生だしね」
つい最近お漏らしを卒業したと思っていたのに、本当に子供の成長は早い。きっと今はだっこできてもすぐに反抗期が来てしまうんだろうな。
「ありがとうチョンロ」
なんだかジーンとして抱き締めるとふんわり出汁の匂いがした
「あのー、水指すのは悪いと思うんだけどさー時間大丈夫?」
「げっ、もう20分じゃん」
急いで洗面所に向かっていつぞやかにドンキで買った黒染めスプレーを探す
「あった!ヤンヤン!」
チョンロに服を着せてたヤンヤンに髪を黒くしてもらう
「ぼく、なんか感動だよ。あんなに人目を気にしないねえちゃんが弟のために髪を黒くするなんて」
「泣いてるふりしてる暇あったら手動かせ」
「こんなに色々やってあげてるのにそんなこと言っていいのー?」
イタズラそうに笑う。ヤンヤンも大きくなったけどこの笑顔は変わらない
成長も大切だ。だけどみんなの成長が早すぎて時々置いていかれているような気がするときがある。そんなときヤンヤンにどれ程救われたことか
「ありがとね」
「なに、急にキモいよ」
「わたしに着いてきてくれて」
ヤンヤンはちょっとびっくりしたような感動したようなそんな変な顔をした
「はい、できた!」
鏡を見ると綺麗に髪の染まった自分がいた。金髪一択だと思っていたけど案外いいかもしれない
「はい、じゃあこれ着て!」
「なんだこれ」
ヤンヤンがバッグから取り出したのはベージュのスーツだった
「母さんのクローゼットから取ってきた。ねえちゃんのことだから服なんて用意してないでしょ」
全くできた後輩を持った。頭もよくて運動できて手先も器用で気も使える。このへらず口さえ直せば完璧なのに
「ねえちゃん、まだー」
玄関でチョンロが待ってる。ピカピカの靴を履き2時間悩んで決めた黒いランドセルを背負ってくるりと回る
「別にリュックで良かったのに」
「なに言ってんだ。小学生になるんだぞ。小学生といえばランドセルだろ」
貯金がほとんど無くなったがやっぱり買って良かった。口ではこんなこと言ってるチョンロも2時間も悩んでたのだからきっと嬉しいはずだ
「それじゃあ」
「「いってきます」」
「いってらっしゃい」
扉を開けたとき大切なことを思い出した
「あっ、ヤンヤンあと」
「チソンを保育園に連れてけ、でしょ?」
本当に優秀な後輩を持ったものだ
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作者名：ara | 作成日時：2021年10月31日 22時
