華は短し、恋せよ乙女

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SIDE：てつや



てつや「ただいま〜虫さんも入る？」

虫眼鏡「おかえり、僕もう家で入ってきたから平気」

「よーし、髪 乾かしたげる！」

てつや「酔ってるやん、痛くせんでよ」

「痛くなんてしんやん、任せて！」


Aにドライヤーしてもらうのは気持ちが良い。
毎日こうしてから眠るのは控えめに言って最高だし、あー俺幸せだなぁと思う。



虫眼鏡「てつや何飲む？」

てつや「んー、ビール貰おうかなぁ」

「よし、終わり！」

虫眼鏡「Aもうだいぶ酔っとるから ほどほどにね」

てつや「酒弱くなったよね」

「悔しいなぁ、26歳は無理が効かんね」

虫眼鏡「もう僕のことアラサー呼ばわりできんよ」

「周りも年下の方が多いしね」


いつもの飲みと場所は違えど、結局ネタはYoutubeの話とお酒の話で。
Aは昔より弱くなったくせして、今まで通り飲もうとするから放って置けない。


てつや「それで最後ね」

「はーい」

虫眼鏡「てつやってAの前でだけ 大人になるよね」

てつや「ん、そう？」

「てっちゃん超お子ちゃまなのに」

てつや「その超お子ちゃまに 心配されてるのはどこの誰ですかぁ」

虫眼鏡「他で誰かの世話焼いてるとこなんて 見たことないからさ」


虫さんに言われてふと思い返すと、甲斐甲斐しくAの世話を焼く自分が思い当たる。しかも嬉しそうに。

人に甘く、自分にもっと甘くが人生のモットーで今までやってきたが、それとはまた別の次元でAに構っていた気もする。それがなぜかは 全く分からないが。


てつや「まぁ俺も大人になったってことよ」

虫眼鏡「ほーん」

てつや「な〜、お子ちゃまのAちゃんっ……て、寝とるやん」

虫眼鏡「お子ちゃま通り越して赤ちゃんだなぁ」


言い返されるのを待っていたら、ソファにもたれて寝息を立てるA。

おいおい本当に子どもみたいやん、と思いながらも 足は自動的に寝室に毛布を取りに向かう。


虫眼鏡「ほらまた 世話焼いてる〜」

てつや「あれ、ほんとだ」

虫眼鏡「なにそれ、無意識でやってたの(笑)」


うん、なんか、俺 自覚してなかったみたい。
肩を冷やさないように Aを毛布にくるむのがいつも通りのこと、と思う時点で世話焼きがだいぶ板についてる。

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