spring moon

#49 ページ49

spring moon #49

『誰と居るの？』

「ジ、ジソンが朝食作りに来てくれたの...唯そ
れだけだから大丈夫だよ」

『そっか...ごめん、そろそろ学校行く時間だか
らまた連絡するね』

半ば無理矢理に切られた電話に唖然としながら
申し訳無さそうに私を見つめるジソンとぱっち
り目が合った。

昨日の今日なだけあって戸惑いが隠せないのは
仕方がない事だろうか。

良く良く考えてみれば、幾ら友達であったとし
ても異性を家に招いている事は確かなのだ。

私とジソンに男女としての感情はないのだと言
ってみても、信じて貰えたりしない筈だ。

それに、もしも私が彼の立場だったらどうした
だろうかと考えると、ジソンを家に招いた事で
はなく、彼の気持ちを考えていなかった自分自
身に堪らなく後悔した。

「相手、ダニエルくんでしょ...ごめん、もしか
して勘違いとかしてないよね？」

「分かんない...でも、電話切れちゃって」

「絶対勘違いしてるじゃん...」

ジソン自身も自分がしてしまった事の重大さに
気付き始めた様だった。

けれど、今ジソンを帰した所で状況が変わる筈
がない事もジソンが悪い訳ではない事も重々分
かっていた。

まるで言い訳を探す様にして私は慌ててスマホ
を手に取り、彼とのメッセージ履歴を開いた。

ジソンはただ朝食を作りに来てくれただけなの
だと今からメッセージで彼に伝えたとしても、
何も変わらない様な気さえする。

「大丈夫だよ、ダニエルくんにはちゃんと説明
しておくから...ジソンがそんな顔しないで？」

あからさまに眉をハの字にして見せるジソンを
横目に大丈夫だからと笑みを浮かべて見せる。

彼のあんな態度は初めて見たのだと堪らなく胸
が苦しくなった、けれどこうなってしまったの
も余りに私が無責任だったからだろう。

彼なら何処かで理解してくれているだろうと、
少なからず彼の優しさに甘えていた事も確かだ。

「ダニエルくんには悪いけど...俺、二人の為に
Aと友達辞めたくないよ」

「辞めたりしないし、ダニエルくんはそんな風
に言ったりする子じゃないから...」

そんな風に言ってくれているジソンを慰めなが
ら、放課後カフェに出向いたとして彼にどんな
顔で会えばいいのだろうかと吐息が洩れる。

こんな事になるだなんて思わなかっただけに、
今の私は幾分気持ちを混乱させていた。

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