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#17 ページ17

spring moon #17

カフェに着く頃にはあれだけソウル市内を照ら
していた夕日も沈んでしまっていた。

夕日が沈むのが早いせいで、まだ夜にもなって
いないと言うのに辺りは幾分薄暗く感じた。

寒さに吐息を洩らしながら、コートの前を手繰
り寄せて身体を強張らせる。

身体はこんなにも寒さを感じているというのに
顔は随分熱いだなんて、なんて矛盾だろうか。

相変わらず重たいドアを開けようとドアノブに
手を掛けてみるが、鞄と紙袋で手が塞がってい
る為に上手く開けられない。

仕方がない、と荷物を足元に置こうとした時突
然重たいドアが軽くなった事が分かり顔を上げ
て見せる。

と、相変わらず細い目をより一層細くして可愛
いらしく微笑む彼の姿があった。

私より何倍も大きな身体と手でドアを支えてく
れる姿が堪らなく逞しいと感じてしまう。

「ヌナ、待ってたよ」

待っていただなんて言葉にこんなにも心を動か
されている私は、何て単純なのだろうか。

彼の優しい眼差しが眩しくすら感じてしまい、
ぽつりとお礼を呟きながらそっと目を逸らした。

私の手から鞄と紙袋を持ってくれている彼は何
時も座る窓際のカウンター席まで荷物を運んで
くれた。

相変わらず客数の少ないこのカフェは他カフェ
が忙しそうにしている時間帯でも、余裕がある。

おかげでゆったり過ごせるのだなんて思いなが
ら、彼が椅子の上に下ろした荷物を見て慌てて
口を開く。

「これ、ダニエルくんに...」

そう言いながら椅子に置かれたばかりの紙袋を
持ち上げて彼へと差し出した。

「俺?」

「昨日そのまま着て帰っちゃったから...」

「気にしなくて良かったのに...俺、ヌナに言わ
れなかったら忘れてた」

「ごめんね、私も帰ってから気付いたの」

受け取った紙袋の中を見る彼は、ロングダウン
ジャンパーが入っている事を確認すると何処か
嬉しそうに微笑んだ。

「渡しに来てくれて、ありがとう」

「でも...」

「でも?」

今言うしか、伝えるしかないのではないかと幾
分距離がある様に見える彼に一歩近づいてみる。

「渡す為に来たんじゃないの、ダニエルくんに
会いたくて来たんだよ?」

言わなければならないのだと決めていた言葉が
まるで台本を読んでいるかの様なカタコトなト
ーンで口から溢れ出した。

言おうと意気込んでいたのが裏目に出てしまっ
ただろうかと目線を外した時。

手を引かれた私の身体は重力に負ける様にして
彼の腕の中へと倒れ込んだ。

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設定タグ:wannaone , カンダニエル , WANNAONE   
作品ジャンル:恋愛
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choi(プロフ) - maryさん» ジソンオンマタイミング!笑 母性本能全開のジソンさんにはオンマ的ドジも頑張ってもらわないと、と思いましてヽ(´o`;にしても我ながら今のタイミングはちょっと!ですヽ(;▽;)ノ (2018年9月12日 19時) (レス) id: 3ac3189961 (このIDを非表示/違反報告)
mary(プロフ) - あああああ!!ジソンオンマー( TДT)今は声かけちゃダメー( TДT)笑 (2018年9月12日 12時) (レス) id: d75f5942a5 (このIDを非表示/違反報告)
mary(プロフ) - ぜひ!!ぜひその番外編読みたいです!!( *´艸) (2018年9月12日 12時) (レス) id: d75f5942a5 (このIDを非表示/違反報告)
choi(プロフ) - maryさん» ジェファンとの絡みに反応下さるのmaryさんだけなので、密かに凄く嬉しいです!笑 番外編でダニエルくんとジェファンのお話を書こうかな...なんて思っちゃいますヽ(´o`; (2018年9月12日 11時) (レス) id: 3ac3189961 (このIDを非表示/違反報告)
mary(プロフ) - ジェファンとの絡み待ってましたー!!やっぱりダニエルくんとジェファンくんの絡み大好きです(*´∇`)もうウジンに何されたんだ!!笑 (2018年9月11日 23時) (レス) id: d75f5942a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:CHOI | 作成日時:2018年7月9日 16時

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