毒リンゴと王子様と【出水公平】

34口目 ページ35

隣を見ると、

出水は飲み終えた缶を握りしめていた。





「出水、」




缶の上に手を添えると、出水は はっと顔を上げる。




「…………」






「……………俺さ、



お前のこと、好きだ」






「………え?」





何をいきなり、と驚いて何も言えずにいると



出水はベンチから立ち上がり、私の目の前に立った。






「だからお前を支えたいって言ったし、

お前の背負ってる物、俺も背負いたいって思った。


多分、お前からしたら余計なお世話だったのかもしれないけど
けど…それでも俺、本気だから。


お前のそばにいても、いいか…?」








「……っ、…うん…っ…」






今日何回目の涙だろう。


私の涙は、枯れることを知らないのだろうか。
唇を噛み締めて、声がもれないように我慢をするけれど
それでも涙は止まらない。




あぁ、ほんとうに



彼は、危険だ＿____＿………








「……俺はお前を、置いていかないからな」







「…うん…っ」








抱きしめられた。



返事を返すと同時に
私も、腕を伸ばして抱きしめ返す。


手に力が入らない。
涙で目の前が何も見えない。



けど、温かい。







.








＿＿___________そこに、彼はいる

35口目→←33口目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す