136話 溶けてゆく ページ42
「…隈ができてる」
『っあ…』
「おいで」
頬に置かれた手が背中と後頭部に回され、引き寄せられる。
…何だ?何が起きてる?
抱きしめられていることも分からず、ぼーとする。甘い声と甘い匂い。頭がクラクラする。
『あ、の…』
「可哀想になぁ。お前はこんなに頑張っているのに」
『ちょ、ちょっと…あッ、』
首にキスをされる。ちょっ、やだ、首…!いやいやと体を捩る。しかし当の本人は楽しそうだ。
『あの、私もう部屋にもどっ、』
「お前は頑張ってる」
その台詞を聞くとピタッと体が固まった。
ゆっくりと彼の顔を見上げると、初めて会った時のような柔らかく優しい微笑。
『……ぇ…』
「誰も認めてくれないのは辛いよな。たった1人で誰も頼れず、こんなにも努力しているのに」
耳に唇が触れそうな距離で言われ、反対側のピアスを弄られる。ゾクゾクッと背中に何かが這う感覚がする。
何、何で…
『(何であなたが私の欲しい言葉をくれるの、)』
「
『え…』
「クソゾクゾクする」
甘ったるい猫撫で声。顎を優しく掴まれ目線をあげられる。そして青薔薇が近づく。
もう唇が触れそう____
「……」
『……』
「……あ?」
キスされそうだった。でも顔を逸らし、唇を噛んで荒い息を繰り返す。
『フーッ、フーッ…』
「……何だ、クソ雑魚メンタルかと思ってたが、理性はしっかりしてるんだな」
「つまらん」と吐き捨てるカイザー選手。私は彼の胸板を押し距離を取る。
その拍子でふらりとよろめいたが、机に手をつき体勢を立て直す。彼はそれすらも気にしない様子で肩をすくめて見せた。
「我慢をすればするほど、怖いのはそれが耐えきれなくて弾ける時だ」
ずれたバスローブを正し、鼻で笑う彼。私はもう目すら合わせられない。
カイザー選手は満足したのか「その理性が弾けないようにな」と肩を軽く叩き、結局モニターを使う事もなく部屋を出ていった。
扉が閉まると同時に緊張の糸が切れたのか、私はその場に膝をついた。
『はぁ…(…怖い、カイザー選手本人というより彼の言っていた言葉が…)』
……違う。私は感情的にはならない…!私は両親とは違う…!
『(……何か…頭、痛い……)』
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苺子(プロフ) - AYさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんストレスばかりですが、日々頑張って働いてます…((キャラの心情の変化を心がけて書いているので、そう言ってもらえるととっても嬉しいです(о´∀`о)更新頑張ります! (5月10日 19時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
AY(プロフ) - 夢主ちゃんの胃に穴が開きそう… 沢山休んで欲しい😭 あとだんだんと逆ハーになってて読むのがとても楽しいです!!更新頑張ってください! (2023年5月6日 14時) (レス) @page50 id: faf5f904a1 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます!あなた様の小説拝見した事があります…!そんな人からコメントを頂けて嬉しいです🥰これからも応援よろしくお願いします…! (2023年3月17日 20時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - これは玲王様静かにブチ切れ案件っすね……☺️御曹司様はお強いですね…… (2023年3月16日 20時) (レス) @page47 id: 4a8f05344b (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 乃愛さん» コメントありがとうございます!可愛らしいイラストですよね!作者も気に入ってます(*´꒳`*) (2023年3月14日 11時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:苺子 | 作成日時:2023年2月3日 17時