93話 一歩先へ ページ45
____青い監獄vs.U-20日本代表まで、あと15分。
ロッカールームは異様な静けさだった。不思議と緊張感やピリついた空気もない。
「見て潔、Aちゃん。似合う?」
「おー、いいじゃん」
『似合ってるよ。何気に初めてだねユニフォーム着るの』
皆のユニフォーム姿を見てここまで来たんだと実感する。…皆は落ち着いてるけど、私は正直吐きそう。悟られないようにと指の関節を鳴らしていく。
するとタブレットを持った絵心さんが部屋に入ってきた。彼も今日はビシッとしたスーツ姿である。
「やあやあ遅くなった。ギリギリまで悩んだがベンチ入りメンバーが決定した。…交代枠は3。いつでも試合に入れるよう準備しておけ。
それからAちゃん」
『?はい』
「今回派遣されたチームドクターの人ら。挨拶して」
絵心さんの後ろにいたのは2人の男性。年齢は40代後半、もう1人は30代半ばぐらいに見える。事前に知らされていたとは言え、緊張で手汗が滲んだ。
本物のスポーツドクター…私の将来の夢が目の前にいる。
「初めまして。今回青い監獄チームを担当することになった者です。あ、僕がチーフね。よろしく」
『は、初めてまして…!い、荊尾です。今回はよろしくお願いします…!』
「よろしくね」
2人と握手を交わす。だ、大丈夫かな、手汗とか…
「…さて、そろそろ時間だ。準備はできているか?
___勝つぞブルーロック。お前のエゴを今日世界に刻め」
それぞれが自分を奮い立たせるため返事をする。私は近くにいた潔くんに声をかけた。
『…潔くん、絶対勝ってね。…これも私のエゴだから』
「…おう。ぜってぇ勝つから見てろ」
互いの拳をぶつけ、彼もロッカールームから出て行った。残された私も準備をしているとチーフドクターに話しかけられる。
「荊尾さん。先輩として一つだけ大切なことを言うね」
『は、はい』
「決断することを恐れないで。勿論君はまだ高校生だし、医者でもない。今回は僕たちがいるから責任を感じる必要もない。
けどね、絶対に決断しなきゃいけないタイミングが試合にはあるから」
「忘れないでね」と笑う。目元に薄い皺の跡があるから、きっと普段からよく笑う人なんだろう。
私は相棒である救急箱を肩にかけ、力強く頷いた。
『分かってます。ご指導、よろしくお願いします』
___試合開始まで、あと3分。
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苺子(プロフ) - kaedeさん» コメントありがとうございます!隙あらば夢主ちゃんに構ってアピールする士道くんです() (2023年1月20日 19時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
kaede(プロフ) - あは。もうありがとうございます。士道くん最高すぎて逝きそう (2023年1月19日 21時) (レス) @page42 id: 426304659c (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しいです…!更新頑張ります (2023年1月19日 21時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 朝花さん» ご心配ありがとうございます。これからもこの小説を読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします (2023年1月19日 21時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
奥山乃愛(プロフ) - 朝花さん» 分かりました!なんかすみません🙇 (2023年1月19日 6時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:苺子 | 作成日時:2022年12月25日 20時