62話 初めまして ページ14
『(…ここの公式ってこれであってる?あーでも、こっちじゃないと計算が合わないのか)』
大食堂の隅の方で1人座り、ひたすら問題を解いていく。この問題が最後だ。
『あっ、』
あと少しで解き終わるという時にペンが肘に当たり、床へと落ちる。拾おうとすると誰かの手が伸びてきた。
「はい、これ」
『ありがとうございま…あ、』
長いまつ毛に大きな瞳と目が合う。見覚えがあったその人物の名前を呼んだ。
『氷織くん…だったよね。拾ってくれてありがとう』
「ええよ、気にせんで」
「こちらこそ語学学習の時はお世話になりました」と可愛らしく笑い頭を下げる。私も『い、いえいえ!』と頭を下げた。
「ふふ、君も頭下げるん?」
『な、何か反射的に…あの、よければ隣座る?席空いてるし…』
「ええの?勉強のお邪魔やない?」
『寧ろボッチだったし…』
「そお?おおきに」
…可愛いな。ふわふわとした雰囲気に和みながらもペンを走らせ最終問題を解き終える。…よし、できた。
「すごいなぁAちゃん。こんな長い問題パッと解けて」
『内容読んだら意外と簡単だよ』
数学は特に好き。数字を見て考えるのが好き。まぁ反対に古典とか苦手なんだけど…
終わったーと思いサンドイッチの袋を開ける。今日の中身はクリームとオレンジ。
『美味しい…』
「(頑張って頬張っとる…)…あ、Aちゃん」
『?』
スッと氷織くんは自分の口の端をトントンと叩く。何だ?と首を傾げた。
「ここついとる」
『えっ。ど、どこ?』
「こっち」
『ここ?』
「んーん、ここ」
彼の細い指が伸びてきて口の端についたクリームを取られる。その行動に思わず固まってしまった。
「Aちゃん、かいらしいなぁ」
『…ぁ…』
顔が赤くなる感じがわかる。反対に氷織くんはクスクスと笑っている。可愛いとお世辞だとわかっていても、はっきり言われると恥ずかしい。…嬉しい気持ちもあるけど。
『…関西弁ってズルい…』
「僕褒められとる?」
『うん…可愛い…』
「ありがとぉな」と笑う彼にキュンとする。…よくよく考えたら私の周りにこういう人あんまりいないからなぁ…潔くんや蜂楽くん達とはまた違った雰囲気の子だ。
「でもできればかっこええって言われたいわぁ」
『かっこいいです…』
「おおきに」
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苺子(プロフ) - kaedeさん» コメントありがとうございます!隙あらば夢主ちゃんに構ってアピールする士道くんです() (2023年1月20日 19時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
kaede(プロフ) - あは。もうありがとうございます。士道くん最高すぎて逝きそう (2023年1月19日 21時) (レス) @page42 id: 426304659c (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しいです…!更新頑張ります (2023年1月19日 21時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 朝花さん» ご心配ありがとうございます。これからもこの小説を読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします (2023年1月19日 21時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
奥山乃愛(プロフ) - 朝花さん» 分かりました!なんかすみません🙇 (2023年1月19日 6時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:苺子 | 作成日時:2022年12月25日 20時