31話 好き嫌い ページ32
「えっ、A夕飯それだけ…?」
『?うん』
3rdステージの食堂で潔くんからそんな声をかけられる。ちなみに今日の夕飯“も”フルーツサンド。中身はイチゴと生クリーム。
「腹膨れるの?つか一次選考の時からずっと同じじゃね…?」
『あー、そうかも。私あんまり食事に時間かけたくないから。はい、あーん』
「あー」
と凪くんにご飯を運ぶ。彼は怠そうに口を開いた。ここの食事は野菜炒めと納豆とたくあんか。いい匂いだし美味しそうとは思う。ただ今この瞬間自分が食べたいのかと聞かれればそうではない…かも。
「医師志望が聞いて呆れるな。偏食家か?」
『嫌いだからこれしか食べないってわけじゃないから偏食ではないかな…多分。食べるには食べてるし…』
「そんなんでよく俺にちゃんと食事しろーとか言えたね」
『はは、返す言葉もない…』
そういえば最後にゆっくり食事したのいつだったかな…元々あんまり食べないし。すると馬狼さんが食事を終えたのか立ち上がる。そのまま歩いて行きそうな彼に慌てて声をかけた。
『あの馬狼さん」
「あ?」
『き、救急箱運んでくれてありがとうございます。助かりました、重かったし…』
「別に目障りだっただけだ。…あと水分ぐらいちゃんと取っとけ」
トンッと未開封のスポドリを置かれる。お礼を言う前に彼は部屋へと戻ってしまった。
『…やっぱり優しい人だ』
「Aってあーゆーのがタイプ?」
「ぶっ!」と潔くんが味噌汁を吐き出す。いや何でそうなるの…確かに自分単純だなとは思うけど。
『タイプっていうか気遣いのできる人って素敵だと思う…レオくんとか紳士的だし』
「ふーん…」
「(気遣い…気遣いのできる男か…)」
「じゃあ、はい」
『?』
凪くんが私の持っていた箸を取り、野菜炒めを摘んでこちらに差し出す。いい匂いが鼻を擽った。
…これ、食べろってこと?
「俺なりの気遣い」
『それって気遣いなの…んぐ、』
「あっ、おい凪…!」
「あーん」と棒読みで口に野菜炒めを突っ込まれる。…あれ、ていうかこれ…
「あ、」
「ごめん、間接キスしちゃった」
『……』
カァッと自分の顔が赤くなるのが分かる。身を引いて口元を隠す。やだ、私今酷い顔してない?
「美味しい?」
『…あんまり分かんないかも』
「このバカ…」
味なんか分かるか。
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苺子(プロフ) - ぺんぺんさん» コメントありがとうございます!読んで頂き嬉しい限りです(*´꒳`*)これからもよろしくお願いします! (2023年3月18日 23時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんぺん(プロフ) - 最初からとっても面白いので、ついつい熱中して呼んでしまっています・・・。これからも頑張ってください!! (2023年3月17日 20時) (レス) @page28 id: 0923c869aa (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - ユイさん» コメントありがとうございます!今あなた様に出会えたことに感謝です((更新頑張ります!(*'▽'*) (2023年3月15日 22時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 初コメ失礼します!もっと早く見つければ良かったです。好きです!応援してます (2023年3月14日 13時) (レス) id: 0e75ff5f17 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - アレンさん» コメントありがとうございます!雪宮くんに振り回される夢主です((これからもよろしくお願いします…! (2023年2月4日 11時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:苺子 | 作成日時:2022年11月29日 16時