舞台の上では【伏見臣】

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少し歩いたところにはバイクがあって、臣さんは私にヘルメットを渡してくれた。

「このバイク、臣さんのなんですか…？」

「あぁ。バイクは乗ったことあるか？」

初めてです、と答えたら少しだけ心配そうな顔をする。

「危ない運転するつもりはないが…もし、怖かったら言ってくれ。」

そう言って臣さんはバイクに跨り、私に後ろに座るように促した。
恐る恐る臣さんの後ろに静かに座ると、ちゃんと掴まってろよ、と呼びかけられる。
掴まるって何を？え、漫画でよく見る腰に抱きつくやつかな？
うわぁどうしよう恥ずかしい…！！

「し、失礼します…」

きゅっと服の裾を掴むだけにしておいた。
さすがに抱きつくのは恐れ多い…

｢…もう少ししっかり掴まってくれないか？｣

｢えっ…？｣

私が聞き返すや否や、臣さんは私の腕を掴んで自分の腰に回した。

｢服だけだと俺が心配なんだ。｣

ヘルメット越しで表情はよく分からなかったけど、優しそうな声音で安心した。
先程より断然密着した姿勢でバイクは走り出す。

運転してるから会話がないのは当たり前なんだけど、沈黙が余計に緊張を煽ってドキドキする。

臣さんの想像より少し細い腰。
腕から伝わってくる臣さんの熱。
一つ一つがぎゅっと心を締め付けて苦しい。
でも嫌な苦しさじゃない。

…こんなに幸せでバチ当たったりしないかな。


臣さんにバレない程度に少しだけ、腰に回した腕の力を強めた。

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