1ｰ4 ページ8
「藍沢、頼む」
藤川、緋山、葉山、灰谷はICUへ患者を送りに行った。
「またずいぶんとバタバタしてますね」
「皮髄境界が消失してます。脳幹の圧排が強い」
「ダメか」
「蘇生に時間がかかりすぎたましたね」
ドクターヘリで搬送された胸痛の女性患者が運ばれてくると、白石は直ぐにその患者へと向かったが、付き添っていた冴島と三井の表情は険しい。
「救急隊の到着時には既に心停止、CPRにははんのうしません」
白石は心臓マッサージを始める。
「まだ若いしPCPSはどうかな？」
「1度もアドレナリンに反応してません」
「瞳孔はどうですか？」
「散大してる
白石、残念だけどあきらめましょう」
「そっちもダメか」
そのタイミングで藤川、緋山、葉山、灰谷が戻ってきた。
「両方か…」
橘はこう言った。
「戻ってこないか、藍沢」
「いや、白石はスタッフリーダとしてよく回してくれてるよ。でも人手不足はどうしようもないからさ
藤川もろくに家に帰れてないだろ？フェロー達の教育もあるし。なぁ
それで緋山が戻ってきてくれた。周産期医療の勉強、中断して。感謝してるよ。
それでもまだ戦力が足りない。タフに患者と向き合える医者じゃないとさ、ここは務まらないじゃないか
藍沢、もどってこないか」
白石、藤川、冴島、緋山が返事を待つ。
わずかな沈黙のあと、藍沢が答えた。
「すみません。救命に戻るつもりはありません」
と。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：し る う ぁ | 作成日時：2022年7月27日 23時
