運命か不幸か。 (ページ36)

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葉山side

母の急変以来、私は母の病室に行かなくなった。

会いたくない、もし死に際の顔とかだったら、すぐ、何かを失っちゃうって気がしてて。

そんな理由で何回も何回も行かなかった。

だけど行かなきゃいけない事ぐらいなんてわかってる。

1番わかってるよ。

今日は急変患者もいない。

ヘリ要請も来ていない。

すると、私の携帯が鳴った。

『葉山です』

「海宙、」

『緋山先生、』

「お母さんがまた急変した。もう私達は治療のできようがない。もう長くない、すぐだと思う。だから来て。みんないる。」

『…、わかりました』

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名取side

相手の大切な人を失う瞬間は初めて見るのかもしれない。

葉山海宙。

こいつは特に謎だ。

家庭環境も。

そもそもあいつにとって、母は大切な人なのか？

考えていると、葉山がきた。

葉山はお母さんの横に行き、見つめている。

「海宙ちゃん

いつもありがとう。こんなに立派に成長したんだね

お母さん、今更お母さんズラ？って感じかもしれなけど…

海宙ちゃんを生んで良かった。

沢山海宙ちゃんが生活面で注意してくれて、気づいた所もあった。

海宙ちゃん、貴方は誇り。

もう家族の責任感なんて抱かなくていいの。もう社会人だし、やりたい事をやればいいのよ

海宙ちゃんが立派に育ってくれて嬉しい。

ありがとう。」

葉山は何の言葉も発さず泣いていた。

「酸素を増やすと本人は楽になります。けれども、病気のせいで息を吐く力も弱まっています。そのため、体内にたまる二酸化炭素も増える。つまり…早く死が訪れることになるかもしれません。」

葉山に何があったのかはよく分からない。けど、あんなに愚痴言ってて泣いてるって事は

お母さん、大切なんだな

って思う。