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横峯は山車の下敷きになっていた女性の処置をしている白石のもとへ、月相を変えた横峯が駆け込んできた。
「先生!白石先生!」
「どうしたの?」
「中の、だ、山車と家の間に…」
「ちゃんと言って」
「挟まってるんです…子供が、!」
もしや…と葉山と目を合わせる。
手当てをしている女性に視線を戻し、その手を握った。
「お子さんがいるんですか?もしそうなら、私の手を握ってください」
女性は弱々しく握り返した。白石は再度処置をしている葉山と目を合わせる。
「その子はどこ?」
「中です。家の中…」
「今、誰が診てるの?
放ってきたの?誰もいないなら呼んで。なんのためにシーバー持ってるの!?」
「あ、…」
「…あなたはこの女性を見てて。バイタルの変化に気をつけて。中の状況を確認してまた指示を出すから。」
「対光反射が弱い…救出、急いでください!
葉山先生、緋山先生にトランシーバーでこっちこれるか確認してくれる?」
『わかりました』
葉山は緋山に声をかけた。
『緋山先生、そっちどうですか?』
「太った女性は下肢の開放骨折だけ。もう1人は脱気したら安定した」
『小児バック持ってこっち来れますか?』
「OK。フェローに管理任せてそっち行く」
あまり挿管が上手くいかず、葉山は少年の挟まっている所の方の上に乗った。そうしていると緋山が到着した。
「8歳ぐらい…?これ、体勢厳しいね」
「上からアプローチできる?葉山先生」
『できます』
「緋山先生はサポートお願い」
「わかった」
「よし、入った」
3人がかりでようやく少年への挿管は成功した。
「OK、骨髄針入れよう」
その時、緋山の胸のトランシーバーから名取の声が聞こえてきた。
「緋山先生、名取です。聞こえますか?」
「何?」
「出血があります!」
「出血?どこから?」
「なんか、腰の辺りから…」
「腰?あんたが診てるの浴衣の方だよね?」
「あ、すいません!開放骨折の女性が。」
「あぁ、そっちか」
「…白石、海宙」
「大丈夫。行って」
緋山は頷き、その場を離れた。
葉山は緋山が出ていくのを横目で確認し、処置を再開した。
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作者名:し る う ぁ | 作成日時:2022年7月27日 23時