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「聞きたかったこと…?」

「うん」


何を聞かれるのか、ハラハラしていると沙耶香ちゃんは、自分の頬を指さして、私に問いかけた。


「ここの怪我ってどうしたの?」


いつもの元気そうな顔から一転。不安げで心配そうな表情に変わった。

あぁ、心配してくれてたんだ…。だから、前も私と会う時そわそわしてたのかな?これを聞こうと思ってたんだね。ホント優しいなぁ。


「この怪我は、なんて言うかな…。まだ治ってないとかじゃなくて、ちょっと痕が残っちゃってて、あんまり綺麗とは言えないから、こうしてガーゼを着けてるの。」

「ほんと?もう痛かったりしない?」


小さな嘘を吐いてしまった。本当はまだ治りきってない。でも、友達には心配かけたくないから。




頭の中で桃色の髪のあの子の姿が重なってしまう。


『もー!なんでそうやっていっつも怪我ばっかりするの!百々はこんなに心配してるのにっ!』

『ごめんってば、百々ちゃん。』


怪我したときの消毒も自分でやったら痛くて堪らなかったのに、何故か百々ちゃんがやってくれた時は、全然痛くなかったなぁ。百々ちゃんが、自分の事のように心配して怒ってくれるのが何となく嬉しくて、いつも怒られてるのに私は笑ってた。傷は痛いはずなのに全然痛くなかった。





今もきっとそういう感覚なのかな。ガーゼの上から触れてみたけど、傷口は全然痛くない。普段は薬塗ったりするときに触ると痛いのにな。


「うん。大丈夫だよ。」


沙耶香ちゃんがそれを聞いて笑った。本当にこの人は太陽みたいな人だなぁ。つられて私も笑ってしまう。こんな風に心配されることなんて久しぶりで、暖かい気持ちを感じたのも久しぶりだった。何故か零れそうになった涙。それをぐっと私は抑えた。



「沙耶香ちゃん、ありがとう。」

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作者名:和椛 湊 -wakaba sou- | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月7日 23時

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