【本編小説】この夏は君と。 (ページ44)

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◇絵になる人達［紅邑色羽］ページ44

結構な人数が集まってきた。
今ここに居るのは、僕を含め八人。
あんなに綺麗な封筒で招待状が来たんだし、これから僕らが乗るものだと思われる船はかなり豪華。もっと人が来ても良い気がする。
それに集まった人達は大体同い年に見える。大人は送迎に来た家族くらいなものだ。手紙を受け取った時からなんだか不思議に思っていたけれど、ここに来て更に謎が増した感じがする。

ぐるりと改めて周りを見渡してみた。
この景色も綺麗だが、周りに結構な美男美女が揃っている。絵になる光景だなと思いながら、僕は持ってきた鞄に腕を突っ込んだ。
がさがさと荷物を掻き分け、中からタブレットを取り出す。それを探り当てた時に脳内で『てってれー』という某猫型ロボットの効果音が響いた気がしたが、多分気のせいだろう。

横につけてあったペンを即座に取り出して、大元のラフを描いていく。折角だから皆のイメージがちゃんと伝わるのがいいな。
背景はすぐそこまで迫っている砂浜で、小物として木とベンチを入れた。

まず梢ちゃん。アクロバティックな動きが印象に残ってたから、木のあたりに。
彼女にいち早く打ち解けていた沙耶香ちゃんはその近くが良いかな。
それと雪ちゃんは髪が綺麗だから風に靡かせたら映えるだろう。
女子は基本どう描いても綺麗に映るなぁなんて考えながらペンを走らせる。
色々考えているうちに用紙はいっぱいになっていた。

『GAME SET！！』

「うぁぁあー！！？」

隣からそんな叫び声が聞こえてきたので、何事かと思ってペンを止め、隣に視線を向ける。
沙耶香ちゃんがゲーム機を手にしたまま震えていた。
どうやらゲームに負けてしまったらしい。沙耶香ちゃんのものと思わしきキャラクターが画面外へ吹き飛ばされるのが見えた。キャラクターとステージの選択画面をA連打ですっ飛ばしながら第二戦に入るのを見て、僕は密かにイラスト内の沙耶香ちゃんがもつゲーム機の中に、さっき彼女が使っていたと思われるキャラクターと一位の文字を描いたのであった。