イン・ザ・ショコラ 5th *Ryosuke.Y*

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気づいた時には身体は前のめりに傾いて、階段から足を踏み外した。


手すりを掴み損ねた身体は重力に逆らうことなく落ちていく。


私、今日退院したばっかりなんだけど。


…なんて階段から落ちかけてるっていうのに、なにを呑気なこと考えてるんだろう。

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時間にしてそんなに長くないものの、ゆっくりやたらとスローモーションに見えた。


腕を引き寄せられるまでは。


「あ…っぶないなあ…大丈夫？」


A「…大丈夫、です…」

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地面に叩きつけられる覚悟だったからびっくりした。


後ろに引かれた腕を辿ると大ちゃん先輩がホッとした顔をしていた。


A「先輩なんでこんなところに…」


大貴「屋上でサボってたからね。戻ろうとしたら階段から落ちそうになってたから。」

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落ちそうになっていた？それじゃあまるで私が自分の不注意で落ちたみたいじゃん。


A「……いや…わかんないですけど……誰かが…」


わざと押された？…としか考えられない。


大貴「……。」

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A「…ぼーっとしてたんですかね、」


そんなわけないはず。もう熱もないし、あの時は打撲で済んだし。


っていうか朝からやっぱりおかしい気が…


大貴「自業自得だろ。」

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A「…え？」


私の顔も見ずにそう吐き捨てるように言った大ちゃん先輩は階段の下へ消えていく。


…自業自得？


A「待ってくださいっ…！どういう意味で…、」

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追いかけるように急いで階段を下りたけど、先輩の姿は見当たらなかった。


…誰かにつけられてる？


でもそんな気配はしないし。


そもそもつけられる理由がない。

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何かしたかな私。


どっちかというと私被害者なんだけど。


そういえば、伊樹先輩はどうしてるだろう…


「A！」

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A「あ、裕翔。」


顔を上げれば裕翔が立っていた。


裕翔「STもう終わっちゃったよ。」


A「え、うそっ！」

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裕翔「ねえ…Aさぁ…」

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