E組だって空を見る【暗殺教室】 (ページ23)

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崩れた壁から外の雨がぽたぽたと中にも侵入してきた。
というのに、たった今入ってきたその人は雨に濡れた様子もなく平然と佇んでいた。

そして彼の真向かいの教卓に立つ殺せんせーは笑顔でも真顔でもなく、中途半端な顔をしていた。

気味の悪い沈黙を破ったのは雨音ではなくシロだった。

「堀部イトナだ。名前で呼んであげてください」

私はもう一度イトナくんの方に向き直る。
カルマくんが何かを言いたげに私を見た。そして口を開く。

「ねぇ、イトナくん。ちょっと気になったんだけど」

この教室にいる人たちの注意はカルマくんに集まる。

「今外から手ぶらで入ってきたよね。
外どしゃ降りの雨なのに、何でイトナくん、1滴も濡れてないの？」

当然の疑問だ。
だがこの空気で質問できるほどの勇気を私は持ち合わせていなかった。

イトナくんはロボットのように振り向いてカルマくんの元へ近づく。
まるで子供を手懐けるように彼の頭に手を置いて

「お前はたぶん、このクラスで一番強い。けど安心しろ
俺より弱いから俺はお前を殺さない」

そうイトナくんは言った。
質問の答えにならない応えにカルマくんも唖然としていた。

「はぁ？答えになってないんだけ」

「俺が殺したいのは俺より強いかもしれないやつだけ」

カルマくんの言葉を遮ってイトナくんは先生の立つ教卓へ歩き始めた。

「この教室では殺せんせー、あんただけだ」

そんな言葉を羊羹を食べながら聞く不謹慎な先生。
教室は先生のゆるい咀嚼音と雨音に支配された。

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