〈HQ〉君のチョコレート【赤葦京治】【完結】8

8-29 粒目 ページ29

貴「蛍！」

月「遅いんだけど。」

予想通り。不機嫌な顔した蛍が更衣室前で待っていた。





貴「明光くんとの練習は？」

月「今日はオフらしいから。ほら、店まで送る。」

貴「ぇ！？わざわざあんな近くまで良いよ…！」

私の言葉を無視して歩く蛍の後を追いかける。

一緒に帰ることはあっても店まで送ってもらうのは初めてだな。

どうしたんだろう。





いつも以上に口数の少ない蛍。

あっという間に店に着き、

なんとなく気まずい雰囲気の中、

貴「ありがとう。じゃぁ…」と手を振りかけた。








月「他のことは相談できても…」

貴「へ？」

蛍は何の前置きもなく突然話し始める。

月「赤葦さんの事で悩んでたら、さすがに赤葦さんには相談できないでしょ？」

貴「ぇ！ま、まぁ…そうだろうね…。」

ピクリと反応してしまい

視線を泳がせる私を見て蛍はため息をついた。







月「………ホント、君は分かりやすい人になったよね。随分素直になっちゃって…。」

貴「はぃ！？」








月「いや、だから…。赤葦さんの事で悩んだ時は…僕が話ぐらい聞いてあげるよ。」

貴「！！！」

月「アドバイスとかは期待しないでよね。じゃ、話したくなったら言って。」

じゃあ。と、蛍は背を向けて言ってしまった。









いつも気怠げで面倒な話に首を突っ込まない蛍が…

私の恋愛相談は聞くと…！？

驚いた私はしばらく立ち尽くし、俯いてまたあの日を思い出す。

花火大会の日の…自分の気持ちに気づいたあの瞬間を…。



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