〈HQ〉君のチョコレート【赤葦京治】【完結】6

6-16 粒目 ページ16

オーナーは手を振りながら

その場を離れていく。

私は何を言いかけたのかな？と思いながらも

そのまま赤葦くんの電話をとった。






貴「もしもし。」

赤「もしもし？お疲れ様。」





低くて落ち着いた声に少しドキッとする。

きっと、昨夜の出来事のせいだろう。





赤「練習終わり、皆で中継見てたよ。」

貴「皆で！？……恥ずかしいな。あんな情けない試合。」





赤「そんな事ないよ。中継見た後、皆テンション上がって全員で居残り練習してたよ。」

全員でって言葉に少し驚いた。

木兎さんの際限のない自主練は

赤葦くん以外の部員は皆、拒否しようとしてたはず。

赤「しかも、皆自主的に。すごい影響力だったよ。水宮、カッコ良かったからね。」







貴「そんな事…ないよ……。」








無我夢中で闘って、手も足も出なかった。






悔しくて、そんな中、ママとパパの声を聞いて

早く強くなりたいと思った。

でも、赤葦くんの言葉は






正直、嬉しかった。







必死に戦ってよかった。って思ってしまう。

でもそんなの、甘えな気もする。






赤「たださ……。」

複雑な気持ちの中、

赤葦くんの言葉に耳を傾ける。







赤「やっぱり…悔しかったよね…？」





貴「え……。」






赤「いや…見てた俺も、悔しかったから。」






貴「あ……うん、やっぱ…それなりにはね…？」

さっき出し切ったはずの涙が、

まだ出てきそうになる。

どうして、赤葦くんの言葉は

いつもじんわり来るんだろう。







いつも落ち込んだ時に

声をかけてくれるからだろうか。

１度、彼の前で泣いてしまったからだろうか。









貴「でも、もっと強くなって今度は勝つからね！」





良くない。

そう思った。





赤葦くんに甘え過ぎてしまいそうだった。






貴「だから、もっと練習頑張るね」






わざと、明るく言葉をつなげる。

赤葦くんは何も言わずに私の言葉を聞いている。









貴「…………赤葦くん？」

なにも返事がないので声をかけた。

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