血の味 ページ43
ゆっくりと発進して、小さくなっていく車。
ミラー越しにいつまでも手を振っているAを見て、ドンへは頬を指で撫でる。
どうしてだか、ホロッと落ちていた小さな涙。
鼻をすすると少し強めにアクセルを踏んだ。
どうか…
戻ってきて…
俺のところへ…
そう頭の中でAに投げるとウィンカーを出して角を曲がった。
見えなくなった車。
ようやく瞬きした瞳から、頬に伝うのは涙。
俯いて瞼をギュッと閉じれば、ポタポタとさらに落ちる。
震えてた…
ドンへが…
抱きしめる腕が…
重ねる唇が…
震えてた…
押し殺す泣き声の代わりに揺れる肩。
ドンへ…
辛かったんだね…
苦しかったんだね…
私が…
そうさせたんだね…
ごめんね…
ごめんね…
そう思ったら涙が止まらない。
小さな手で拭っても拭っても溢れてきた。
その直後。
ガシャン！！
店先から大きなシャッターに何かがぶつかるような音。
予期せぬ音にビクッと身体が揺れると、顔を上げた。
『……な…何の音……？』
鼻をすすって涙を拭うと、ゆっくり、恐る恐る店先へと回る。
『遥斗！？』
シャッターに身体を預けて、座り込んでいる遥斗。
その顔はあざと傷だらけ。
Aは遥斗に駆け寄る。
『遥斗！大丈夫！？遥斗！！』
既に腫れている目元。
開ききらない瞼を少しだけ持ち上げてAを認識する。
ﾊﾙﾄ『…A…？』
『どうしたの！？』
痛々しいくらいの顔。
触れていいのかどうかためらうような指先。
遥斗は伸ばされてかけたAの手首を強く握った。
ﾊﾙﾄ『…お前……なんで……泣いてる……？』
『……え…。』
真っ赤になった目が泣いているとすぐに気付かせた。
ﾊﾙﾄ『……ま…た……あいつに……会ったの…か…？』
喋れば切れて血の滲む口元が痛んだ。
痛そうに顔が歪む。
ﾊﾙﾄ『…どうして……お前はいつも…泣いてる…んだよ…。』
どうして…
お前を泣かせてるような奴…
いつまでも追いかけるんだよ…
『わ……私の事なんかよりその傷早く手当しないとっ！』
立ち上がろうとするAを引きとめる手。
掴んだ手首を離して貰えない。
『遥斗…？』
顔を歪めるAをジッと見つめる。
ﾊﾙﾄ『…A……。俺は……。』
掴んでいた手首を解放して、Aの頭に手を添えるとグッと引き寄せる。
お前が好きだ…
そう囁いて血の滲む唇でAにキスをした。
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ゆちょみん(プロフ) - みゅうみゅうさん» お読みいただきありがとうございます。手作りのガトーショコラ素敵です＾＾ 引き続きお楽しみ下さいね！！ (2017年2月14日 21時) (
レス) id: 2956dc90c7 (このIDを非表示/違反報告)
みゅうみゅう(プロフ) - 更新ありがとうございます！このお話のドンヘさんがとても好きで、今日のバレンタインにガトーショコラを焼きました^^今はとても切ない二人だけど幸せになれたら良いな。これからも楽しみにしています。 (2017年2月14日 19時) (レス) id: 55c32e169a (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - yukichiさん» いつもお読みいただきありがとうございます。迷走してませんか？大丈夫でしょうか。時間が許す限りUPしますね！ (2017年2月14日 17時) (レス) id: 2956dc90c7 (このIDを非表示/違反報告)
yukichi(プロフ) - 毎日繰り返し読んでいます。ほんと胸が痛いです(´；ω；｀)物語にどっぷり引きずり込まれて１日中考えてることもあります（笑）はやくドンへの元へ帰りたいな。 (2017年2月14日 7時) (レス) id: 7799256b4d (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます。覚えていてくれたんですね。本当に嬉しいです。昨日完結させましたのでこれからどんどんUPします。ただいまです！ (2017年2月13日 17時) (レス) id: 2956dc90c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming
作成日時：2017年2月10日 18時
