【ヒIジIキI組】ちょこくっきぃ【短編集】

▽初恋の終わり方：Hira ページ9

「…これで、いいんだ」

ドアを閉めた後、そう呟く。そう、これで。これで、いいんだ。今頃キヨは告白してるのかなぁ、とか今の俺には全く関係のない事ばかり考えてしまう。だめ、だめなのに…

「…うぅ、あぁぁ…！！」

足の力が抜けたと思うと、途端に涙がぽた、ぽた、と出てきて、溢れていく。そうだよ、ほんとは、Aが幸せなら…なんて、綺麗事だったんだ。ほんとは、

＿＿本当はずっと、キヨが羨ましかった。

俺がずっとずっと大好きだったあの子、Aに好かれて、両想いで。
それにサッカーが得意で、カッコ良くて面白いし、私服がおしゃれだし、字もきれいだし、とっても優しい。

そんなAにお似合いなキヨが、ずっと、ずっと羨ましかった。

今更そんな事言ったって無駄なのは分かっている。俺は本当の自分の気持ちに気付くのが遅すぎたんだ。

「っ、うぁ、ひっ、うぅ…」

溢れ出てくる涙をもうびしょびしょになってしまった自分の制服の袖で拭う。その時に零れ落ちた涙が唇にあたり、少ししょっぱい味がした。

ふと顔を上げると濡れた瞳が窓から見える夕暮れを照らす。涙のせいか、普段見る空よりも輝いて見えた。

「、かえらなきゃ」

そう言い、何事もなかったかのようにすくっと立ち上がる。もう俺に教室を振り返る勇気は無かった。

横にAがいて、一緒に話して、笑いかけてくれるようなことはもうなくなる。寂しいけど、悲しいけど仕方ないんだ。だって、Aはキヨの彼女なんだから。

今なら何度でも何度でも言ってやる。

「A、ずっとずっと大好きだったよ」

そう呟いた途端、俺の頬を一筋の涙が伝った。

＊

『ねぇキヨキヨ、さっきネットで興味深い記事見つけてさぁー！！』
『Aお前さぁ、俺ら付き合ったんだよな？前と何も変わってねーじゃん』
『大丈夫だって、愛情表現だよ、愛情表現！』
『っ、お、おまえさ…て、照れるだろ』

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