【ヒIジIキI組】ちょこくっきぃ【短編集】

▽君への贈り物：Kiyo ページ15

3月14日。

その日俺はAを近くのファミリーレストランに呼び出した。休日だから家族連れでいっぱいだ。

「キヨ君、どうしたの？急に私の事呼び出したりして…」
「いや、えっと、今日ホワイトデー、じゃん。」
「…うん、そうだけどどうかした？」

そう言い首をかしげるA。キヨ君がお返しなんてするわけないと思っているのか、そもそもチョコを渡したのを覚えていないのか。Aの事だから前者だと思うけど。

俺は気持ちを素直に相手に伝えるのが苦手だ。
だから、勇気を出してフジに教えてもらったのだ。俺でも簡単に気持ちを伝えられる方法を。

しかし、やはりAにはわからない伝え方だとしても緊張はする。
どきどきする胸の鼓動を抑えて、俺はコンビニのレジ袋を取り出した。

「あ、のさ。今日、ホワイトデーだろ。A、俺にくれたじゃん。…ケーキ。
それのお返し。ほら」
「え、本当に…！？ありがとう！普通のレジ袋なのはいただけないけど！」

そう言いつつも、嬉しそうな顔でレジ袋の中身を取り出すA。その姿はとても愛おしく感じた。

「…なにこれ？黄金糖？ふざけてる？」
「お、俺だって、こんなの初めてなんだから許せよ！もっと女子っぽいのと悩んだけど、やっぱうめえのじゃないとって思ったから……」
「あはは、冗談だよ。大好き」

＊

それから俺達はAの部屋でダラダラ漫画を読んだりしてくつろいでいた。
俺があげた黄金糖を食べながら漫画を読んでいるAに、俺はこう言った。

「あのさ、その飴あるじゃん。」
「？うん。美味しいね？一個ほしいの？」
「そうじゃなくて！」

緊張するけど、フジから言われたんだ。渡すだけじゃダメ、ちゃんと意味も自分の気持ちも言えって。

「フジから、聞いたんだ。ホワイトデーに飴を渡す意味。」
「フジくん、が…？」

俺は耳打ちをして、Aにささやいた。

「飴の意味はな＿＿」

＊

「へー、キヨあの子と付き合ったんだ」
「…なんでふったんだ」
「あの子が俺なんかと付き合うってのは申し訳ないからね。あの子がキヨを選んだのは正解だと思うよ。……あっ！」

「いい事教えてあげる。キヨ、気持ち伝えるの下手でしょ？もうすぐホワイトデーだし。」
「あ？」

「ホワイトデーに渡すプレゼントには意味があって、例えばマシュマロは『あなたが嫌いです』とかね。


＿＿ホワイトデーに飴を渡すと、『あなたが好きです』って意味になるんだって。」

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