ふたり乗り (ページ14)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:16,988 hit

14 ページ14

｢傘、さっき返してくれたけど帰る時使っていいよ。私の下駄箱の中に入ってるから｣

｢いや、俺急げば自転車で10分だし。大丈...へあくしゅっ｣

｢大丈夫じゃないよ！
私は大きい傘持ってるから気にしないで。｣

｢ごめん、明日返す｣

那須くんと教室に戻ると｢あ、また2人一緒に帰ってきた～！｣とみんなに言われた。

｢いっつもAと那須、一緒に戻ってくるよね！｣
と浮所くんにも言われ、私は少し頬を赤らめながら
｢そうかな？｣と返しておいた。

完全下校ギリギリまで作業し
なんとか今日の分の作業は終わらせた。

校門でみんなと別れ、もう少しで家というところまで歩いてきたとき
後ろから自転車をこぐ音が聞こえてきた。

まさか彼なわけがないけど
彼だったら嬉しい
なんてアホなこと考えて振り返ってみると
やっぱりお母さんだった。

｢あらA。おかえり｣

｢おかえり｣

｢なんでそんなに残念そうな顔するのよ｣

｢お母さん、このまま買い物行くからまだ帰らないわよ｣

そう言い残して自転車に乗り、去っていくお母さんを見送る。

歩き出してしばらくするとまた後ろから自転車の音がした。
お母さん忘れ物したのかな、と思って振り返ってみると

那須くんが傘をさしながら自転車をこいでいた。

彼はすぐに私に気づいて自転車をとめ
｢もしかして家こっち？｣
と聞いてきた。

｢うん。那須くんも？｣

｢なんで今まで会わなかったんだろう｣

家の場所を聞けば
彼は私の家の向かい側を指す。
私は驚きすぎて一瞬固まった。

家に着くと那須くんは私の傘を渡し
私達はお互いに背中を向けて家へ入る。

家のドアを閉めようとしたとき、ちょうど向こうも家のドアを閉めようとしていて、目が合った。
あたふたしていると彼は軽く手を振った。

慌てて振り返そうと思った時にはもう遅くて、彼はドアを閉めていた。

自分の部屋に入ってバクバクうるさい心臓が静まるのを待つ。

ピコンと携帯が鳴ったので確認すると

1-A:Hidaka｢文化祭の打ち上げどこでやるー？｣

と浮所くんがクラスラインで聞いていた。