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最終決戦の、最後の戦い。
「おとーさん」とAは俺を呼び止めた。
よく分かっていない、だけど感覚的に呼び止めなきゃいけない気がしたのだろう。

「大丈夫、お前のおとーさんは天っ才物理学者だろ?俺を信じろ。」
「…………わかった、がんばって、ね」

不安の交じる顔でAは引きつった笑顔を見せた。彼女なりの精一杯の、大丈夫というメッセージ。

『……Aは、』葛城が何かを言いかける。
『Aが何だって?』
『いや、何でもない』

この時の寂しげな葛城の顔が妙に引っ掛かりを覚えたが、そんなことはすぐに忘れてしまった。いよいよ、最後の戦いなのだから。

__________

新世界創生後。
孤独に打ちひしがれていた俺に、また葛城が畳み掛けた。

『一つだけ、言えなかったことがある』
『……何だよ』
『Aの母親はプロジェクト・ビルドで知り合った女性だ、だから』
『もういい』

葛城の言いたいことは、もうわかってしまった。Aはこの世界には、存在しない。
そう都合良く出会えるわけはない。
ましてや、自分の娘になんて。

噴水の前に座っていたら、母と子の親子が楽しげに歩いていた。他にも人がいたのに、目が奪われた。

「ねぇママ、私うさぎさんの風船欲しいな」
「うさぎさん?いいわねぇ、貰ってきなさい」
「うんっ!」

たたたたっと駆け出す小さい女の子。
あぁ、Aはあのくらいの年頃だったな、とぼんやりその様子を眺める。
「……っ、A…?」
よく見れば、Aだ。母親そっくりの顔だと葛城は言っていたし葛城要素は何も無い顔だった。合点はいく。

「……?」不思議そうに俺を見るA。
彼女は知らない。俺のことも、元いた世界の父親である葛城のことも。

それでいい、生きてるんだ。
Aはちゃんと生きてる。


その事実だけで良かった。
何も文句は無い。

葛城は消えた。
万丈が現れた。
Aは別の人生を歩んだ。

「これでいい、んだよな」
「あ?何がだよ」
「……何でも」

何もかも、これで良かったんだ。
皆が俺を忘れても、万丈だけは忘れない。
Aがいなくても、生きてるだけでいい。

……最っ高だ。

そう笑うと万丈は変な顔をする。
「だから何だよ」
「何でもだって」

ふーん、と言って万丈はバイクに跨る。
さぁ、これから何処へ行こうか。

【555】名前負け→←【ビルド】救えぬ命



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設定タグ:特撮 , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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yasuyui0818(プロフ) - すいません、続編ってどこですか? (2019年9月1日 23時) (レス) id: dc39fffb15 (このIDを非表示/違反報告)
yasuyui0818(プロフ) - ありがとうございます 楽しみに待ってます^_^ (2019年7月19日 7時) (レス) id: dc39fffb15 (このIDを非表示/違反報告)
みりんちょこ @ 低浮上(プロフ) - yasuyui0818さん» リクエストありがとうございます!続編でぜひ書かせていただきますね!少々お待ち下さい!! (2019年7月18日 22時) (レス) id: e7f16800b7 (このIDを非表示/違反報告)
yasuyui0818(プロフ) - 続編で目を覚ましたら晴人から庇った事に関して怒られてそこから晴人からプロポーズされ結婚する話をお願いします^_^ (2019年7月18日 20時) (レス) id: dc39fffb15 (このIDを非表示/違反報告)
yasuyui0818(プロフ) - はじめまして ウィザードの晴人で恋人同士で主人公が晴人を庇い敵からの攻撃を受け倒れる話をお願いします (2019年7月18日 20時) (レス) id: dc39fffb15 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みりんちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fbkkydi/  
作成日時:2019年1月5日 19時

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