【短編集】大空の鳥

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【桐生戦兎】
彼に金が無いのは分かってる。だからお返しはいらない、と事前に言っておいたり｢一緒にいられればそれでいいし、バレンタインなんて所詮私の自己満だから｣と強がってみたり。
｢そういうわけにはいかねえよ｣と彼は言っていたけれど、大して期待はしてない。

｢期待してない、みたいな顔してるなぁ｣
｢でも本当にお返ししなくていいから｣
｢あぁそう、1日だけ俺をパシリにする権利用意してるんだけどな｣
｢良いねそれ｣
まず何する？なんて悪戯っ子みたいに笑うから、｢私と今日1日イチャついてくれたら別にいいよ｣とちょっと上から目線で言ってみた。

ナルシストだもの、ちょっとくらい良いでしょ？なんて。

変？それでもいい。私たちの恋愛模様はいつだって変だった。変なものも時が経てばいつかは普通になってくれるから。

【常磐ソウゴ】
おじさんにケーキを差し出されて頬張る。いつだっておじさんのケーキは美味しいし、おじさんは｢お返し｣と言って渡してくれた。
しかし肝心のソウゴは今日はいない。ゲイツやツクヨミのいないクジゴジ堂はやっぱり静かだ。

｢ソウゴくん、Aちゃんのためにホワイトデー結構悩んでたみたいだよ｣
｢本当？ソウゴ、俺の民には全員平等、とか言いそうなんだけどなぁ｣
｢そう言いたいけど、やっぱりAは特別だから｣
ソウゴ！？と振り返ればいつものソウゴがいる。

｢お返し、夜まで待ってて｣
｢……？うん、分かった｣

何も聞かず夜まで待つことにした私はおじさんとソウゴと談笑を続けた。だけど心の片隅に、ゲイツやツクヨミがいてほしい気持ちは確かに存在していた。多分、3人とも。

夜、ソウゴが見せてくれたのは星空だった。レグルスの光が目映かったことを、きっと私は忘れない。


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ホワイトデーということで完走済みと視聴中は全員書き終わりました！！
急いで書いたので至らない点も多かったでしょうが大目に見てやってください(笑)

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