【短編集】大空の鳥

【ビルド】結ぶ紐 ページ11

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久しぶりに戦兎の発明品が出来たという。
久しぶりに、というのも本人感覚なので私には分からないけれど。というかちゃんと発明品が出来たのなんて私にとっては初めてだった。

｢ふーん、それで、何ができたの？｣
｢さぁ何でしょうか！｣
｢いや質問を質問で返すなよ｣

この桐生戦兎という男が住み着いて早数ヶ月。
おまけに万丈という男も付いてきて一人暮らしだった私の家は大いに賑わっている。

しかし万丈は肉体労働が出来るし今も家に不在だけれど、戦兎は『天才物理学者』の一点張りで働こうとしない。しかも戸籍もないから勝手に住んでも問題無い、と言う。わがまま放題か。というか戸籍が無いって何。

｢で、何作ったの？｣
｢だからそれを俺が聞いてるんじゃない｣
｢……いやだって、今まで聞いてないし作ってるところ見てないから知らないよ｣

ドヤ顔してくる。何こいつうざっ。
｢正解はこれでした〜｣
｢……指輪？｣
｢そう！俺と結婚しよう、A｣
｢は？｣

待って、数ヶ月前に出会ったばかりだよ？
それに加えて私の給料に頼りきりのヒモだよ？

｢いや……流石に出会ったばっかのヒモにプロポーズされても困る……｣
｢えぇ……俺こんなに良い男だよ？Aの役に立つように頑張るよ？｣
｢それでもヒモはちょっと……｣

兎に見える。戦兎の瞳が兎に見えて仕方がない。なるほど、私は戦兎をペットか何かかと思っているのか。まぁわからなくもないけど。

｢とりあえず脱ヒモしてから、ね。話はそれから。少なくともビル・○イツ並みには稼いでこないとダメだから｣
｢えっ、それ無理ゲーでしょ｣

あぁ、でもそういえばコイツがヒモだと何となく分かってて拾ったんだっけ、私。アホだなぁ。

｢せめて私のために貢げとは言わないから稼いで、いっそ貢ぐ感覚で稼いでくるとかでもいいから。家賃請求するよ｣
｢家賃かぁ……懐かしい響き｣

何でコイツは家賃を懐かしがるんだ。実家暮らしか。というかここはお前の実家か。

……よく考えたら戦兎にとっちゃヒモであることが私との縁を紡いだ紐なのか。上手いこと言った……とは思わないけど。

｢あぁ、その指輪、婚約指輪ってことにしといて｣
｢だからなんで戦兎と私が結婚することになってんの｣
｢いいからいいから｣

私の左手をそっと持ち上げて指輪を嵌める。
手の甲に触れるだけのキスをして。

あぁ、このヒモ男に一生振り回されるのも、悪くないかもしれない。そう思った自分もどこかにいた。

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