刀と日輪とヒノカミ様。【後編】 ページ5
「……」
「……?」
沈黙が下りる。えっどうしてこんなとこにいるのお前は。そしてなんで黙ると首を
_____なんて言葉を口に出そうとして、止める。
そんな軽口で済ませていい
もっと色んなことを言いたいのに、頭がそれを邪魔してくる様な錯覚を覚えた。
「……久しぶり、だね」
_____結局、当たり障りのない言葉しか発せない。やっぱり俺は意気地なしだよ。うん。
日輪刀を握りっぱなしなのも忘れるくらいには驚いてたしさ。
それについては衝撃が凄かったから、ってことにしておいて頂きたい。
「そうだなあ。
……とはいえ、これはお前に見られたのが初めてってだけで、俺はもうお前と会ったことがあるんだが____、いや、覚えてないよな」
というより見えてない、と言った方が正しいのか。そう呟いた炭治郎の声を、善逸は確かに聞き取った。
けれど、聞いたとしても分からないものは分からない。前世しか覚えてないんだ、ごめんな。嫌で仕方なかったちっさい頃の記憶なんて飛んでるってえの。
後、炭治郎の二人称が君からお前になってることに気が付いた。他人行儀な言葉から一気に前世っぽい口調になったことからも、多分面識あるんだろう。
前世を覚えてるだけじゃ多分、炭治郎はそんなにグイグイ来ないと思うし。
「でさ、こっから本題。
なんで俺んこと助けたの？言うて神様でしょ炭治郎。
俺なんか助けてて、大丈夫なわけ？他の人間のが助ける価値ない？大丈夫？」
「そんなことないっ！
というか、これは俺の問題というか……」
さらりといつもどおりに自虐をしてみせる善逸に、炭治郎は食い気味で否定の言葉を被せた。
「俺の問題？
えっそれどういうこと？炭治郎のせいで鬼がいんの？」
「そういう意味じゃない‼
俺はお前が傷付いてるのを見るのがとんでもなく嫌なんだ。本当に。
でも、善逸は鬼殺を仕事にしているから、鬼を殺すことは咎められないだろう？
だからお前が怪我しないように此処に下りて鬼を狩ろうと来たんだ‼」
ふんすっ、と鼻を鳴らしながらそう言った炭治郎に、成る程と善逸が肯いた。
_____要するに、俺のことが心配で心配で堪らないのか。
ふ、と微笑ましさに笑うと、炭治郎も釣られた様で、一緒になって笑った。
_____そんなこんなで、俺は鬼殺隊一仕事してない人間になることとなる。
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作者名：朝焼。 | 作成日時：2020年1月26日 2時
