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この後誤解だってわかった。 ページ16

そっと廊下の窓から手を伸ばして、ざあざあ、と大きい音を立てて落ちる雫を受け止めた。

ぐすん、と鼻を啜る。
鼻の頭も、そこから出て行く息も、全て熱い。目も赤く腫らして、きっと皆には見せられないな。
だれもいない放課後で助かった。

泣いている理由は、己の想い人であった。……いや、どちらかというとその想い人に想いを告げた人か。
どちらでも構わないが。彼がはにかみながら笑っていたのも、見ていたのだから。
辛すぎて、音を聞くことさえできなかった、そんな出来事。


_____いつかくるとはわかってた。
あの容姿で、あの性格で。彼の両耳に何時もついている花札のようなピアスをつける理由も、まぁ大声で話してくる。

要するに真面目であった。あんな、染めてるとしか思えない髪してるのに。って、髪を染めてるって思われやすいのは俺か。何せ綺麗な金髪だから。生まれつきだぞこれ。聞いてるか冨……あの先生。

こんな風に、少し話を曲げ、面白くしてやらないとまともに考えられない。

放課後、ついさっき。折りたたみを忘れた己が、傘を借りようとして歩いていたあの時。
皆からはあまり見えないような位置で、きっと、彼は、告白されていたんだと思う。
一方は顔を赤らめた女の子で、もう一人は、俺の……って、いや、この言い方をすると悲しくなってしまうな。存外女々しいんだ俺は。

一目散に走った。
どうしようもなくて、ただ、叫びたい衝動を抑えて。
己を抑える力がなかったら、きっと、俺はまた顧問に竹刀で打たれていただろうな。むしろそっちの方がマシだったが。確かに竹刀も痛いが、今の心の痛みに比べれば幾分かマシだ。そう思えるような、痛みであった。

心のどこかがそっと抜き出されてしまったような虚無感。
けれど、己を痛めつけるのはその抜かれた何かが繋がっていた場所ではなくて、もう、取り出されて、どこに行ったか分からないところで。


……悲しいなあ、苦しいなあ。
こういったときの曇天は、なによりも染みる。空も俺と同じみたい。冗談だけど。
しょうがない、折りたたみを忘れたのも、全て俺がいけない。今日は走って帰ろうか。仕方がないから。


鞄を背負って、下駄箱へと走った。

夜空。→←連華。【本誌(二百五話)ネタバレ注意です。】



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作者名:朝焼。 | 作成日時:2020年1月26日 2時

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