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縁結。【後編】 ページ11

「……へぇ、それで。
でも、こんなところに毎日来て賽銭入れて行くのは、なんというか、心が痛むぞ?」

「大丈夫よ、別に。
それに、毎日来てるのは事実だけど、賽銭入れたのは今日が初めてだから」

あれから色々有って、まずは彼から何が有ったのか聞かれ、それについて答えた。
時折眉を下げたり明らかに痛ましそうに顔を歪めたりするので、その都度俺は大丈夫だから、と告げる。

賽銭の話については本当だ。今まで五円玉は勿論、一円玉も入れたことがない。まぁ、賽銭というのは金額で決まるわけではなく、ただ此処に来ましたというのを表すだけなので、結局いくら入れても変わらないのだけれど。

「……そうだ、ねぇ。
君はさ、なんでこんなとこにいんの?もう夜だし、言うなればさっきの言葉完全にブーメランじゃない?」

「……俺は……。
そうだな、俺は此処の関係者というか、なんというか……。
まぁ此処に住んでるから、夜に居るのも可笑しくないだろう?」

成る程、巫女さんというやつだろうか。
いや、多分女じゃないから、巫女じゃなくて巫だな。それにしては服が可笑し過ぎる気がするが。普通紅白の袴なんかを着ているんじゃないのか、そういう人って。知らんけど。

「まぁ、気にしないでくれ。
俺について探っても、きっといいことないから。
俺は君について話がしたいから、出てきたんだ」

どきりとした。
先程の思考、口に出ていただろうか。
否、出ていなかったはず。だって、出ていたらきっと、自分の良過ぎる耳が捉えるのだから。
……読まれたのか?それとも、単なる気のせいか?まだ穏やかに笑みを浮かべ続けるその少年に、此方は畏怖の念を抱いていた。

「そんなに怯えなくても良いじゃないか。
俺はただ、君とお話がしたいだけなんだよ」

限界まで眉を下げて、そう告げる。
その言葉に、俺も寂しかったから、だけど、お前がどんな人なのか言わないと、話さない、と返した。
そうすると、また彼は困ったように笑んで、その後、

「俺は人じゃないよ」

と、簡潔にまとめたそれを告げた。

軻遇突智(カグツチ)、ってわかるか?」

わかんない、とふるふる首を振る。
そうだよな、と言葉が返り、簡単に言うと火の神だ、と告げた。

……へ?

ひのかみ。……火の神?


「神様なのアンタっ⁉」



「……ま、まぁ、俗に言う」





この後地面に跡がつく程の勢いで土下座し変なこと言ってすみませんでしたと叫び、お願いだから顔を上げてくれ、と宥められた。

朝日の中で。 【本誌(二百話)ネタバレ注意です】→←縁結。【前編】



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作者名:朝焼。 | 作成日時:2020年1月26日 2時

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