陽だまりの笑顔。【夏油傑】【◻︎◻︎◻︎】 (ページ9)

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彼女と別れ、真奈美さんと歩き出す。

美々子と菜々子のご所望の流行りのドリンクを両手に持った真奈美さんは、少し苛々したように話を切り出した。

「夏油さま、あの方はお知り合いですか？あんなに長時間猿とお話しなさって……帰ったら消毒しましょう」

その言葉に、ぷっと吹き出す。

そうか、真奈美さんから見ればそうだよな。

私はじっと前を見て、答えた。

「いや、いい」

「＿＿＿＿＿？」

「あの子は猿じゃない。かと言って、高専の術師でもない。………灰原は、いい仕事をしたな。私に殺される条件がひとつもない妹を作り上げたんだ」

真奈美さんは不可解そうに首をかしげた。

……………灰原の、妹か。そうか、道理で。

死人に口なし。彼は、とっくの昔に死んでしまった。

それでも、その妹に影を見るというのは

やはり私は、弱いのだろうか。

＿＿＿＿＿＿否。

「自分にできることを、精一杯やる、か」

ありきたりな言葉のはずだ。そのはずなのに。

今は、その言葉が、ひどく胸に染み込んだ。

完