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警報、その7。 ページ9





吹奏楽部の朝練は運動部よりも早く終わることが多い。というのも始まりが早いからなんだけど。
いつもの通り教室に続く渡り廊下を歩いていると、後ろからドタドタと騒がしい足音が響いてきた。


「Aちゃーーん!!」

「うわっ!……あ、侑くん……おどかさないでよ」

「うははっ、堪忍な」


いたずらっぽい表情をたたえてどーん、と私目掛けて突進してきたのは、治くんの双子の片割れである宮侑くんだった。

一番初めに侑くんと出会ったのは、彼が教科書を借りにうちの教室へやってきた時。なんやこいつ、みたいな目は今になっても忘れられない。
結局、銀島が私を紹介してくれてことなきを得たんだけど……。


「治くんいないの?珍しい」

「ふふん、俺たちがいつもセットで行動しとると思たら大間違いや」

「いや、侑くんが一人で私に話しかけることなんてなかったから」


私は何もツムサムの一人行動が珍しいと言っているわけではない。侑くんが、治くんがいないのに私に話しかけてくることが珍しかったのだ。

そんな私の疑問に、侑くんはニコニコとしている。


「いや、Aちゃんのお菓子気になるなあ思て……」

「乞食すんなやクソツム」

「ああ!?なんやとクソサム!てかいつからそこおったん!」」

「あれ、治くん」


どこからともなく現れたのは、まあ案の定と言うべきか治くんだ。どかっと結構な音を立てて侑くんに蹴りを加えた彼は、「こいつのことは気にせんでええよ」と吐き捨てるように言う。


「お菓子ならいいよ、あげようか?」

「!ほんま?」

「Aちゃん、俺も俺も」


私の言葉に目を輝かせる侑くんと、それを押し除けるように前のめりになる治くん。
はい、とブラウニーを手渡すと、二人ともほくほくと嬉しそうな表情を浮かべた。その顔が見れるのがなんだか嬉しい、作ってきた甲斐があったというものだ。


「ほんまありがとおな!サムがAちゃんの手作りやーって耳タコなるほど自慢してきよったから気になっとったんよ」

「チッ……まあええわ、今回だけは見逃したるけど次は俺にしかやらんでな、Aちゃん」

「ハァ!?それを決める権利はサムにあるんですかー!?」

「……喧嘩するなら先戻るけど」

「あかん!俺も一緒に行く!」

「置いてくなや!」


これから暫くうるさくなるかもな……私はそっと目を閉じて友人に心の中で頭を下げた。この双子は喧嘩から仲直りまでは早いくせに、喧嘩の頻度がとんでもないから。



警報、その8。→←警報、その6。



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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時

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